目標は接触8割減 達成のため「接触の質」に注目を
安倍晋三首相が7日、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言を出しました。対象は首都圏など7都府県。人と人との接触機会を7~8割削減することを目指しています。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「単純に接触を減らすというより、接触の質に注目してはどうか」と提案します。若山氏が独自の視点で論じます。
遅くて緩い宣言
「ようやく出た」感のある緊急事態宣言。だが、強制力をもつ外出禁止や移動禁止ではなく、これまでより強めではあるものの、やはり「要請」にとどまっている。これで本当に効果があるのだろうか。タイミングは遅く、内容は緩いという印象だ。海外のメディアは、こういった「日本式」ともいわれる曖昧さに疑問のまなざしを向けている。 しかし今は、国民が協力して感染爆発と医療崩壊を抑えなければならない。宣言の遅さと緩さを批判したい気持ちをグッと抑え、どういう覚悟をもって協力するべきかを考えてみたい。
「時間を止める」方法
前回、この欄で「時間を止める」という提案をした。(THE PAGE 3月31日配信 「構造的に都市封鎖が難しい日本 『空間』ではなく『時間』を止めるという考え方」) 簡単におさらいする。日本の都市は、ヨーロッパやイスラム圏や中国の都市とは異なって城壁で囲まれていたわけではなく、大きな街道を止めても、細かい市街地道路がつながっているので、都市封鎖が構造的に困難である。一方、日本文化は四季のある風土において時間的な感覚が発達した。日本人が時間に厳格であることは外国人の驚きの一つである。 そういったことから都市の空間的な封鎖より、日本全体の時間を止め、すべての経済活動の工期、納期、契約を数週間延期するのがいいのではないか。医療と食料など、生命に関わるもの以外の、あらゆる生産の「現場を止める」、つまり「時間を止める」という提案であった。 今回の緊急事態宣言は、「都市封鎖はしない」「休業を要請する」という点で、この提案に近いイメージもある。 日本人は企業への帰属意識が強い。テレワークも、休業も、多くのサラリーマンは会社の指示を待っている。業界団体の力も強いので、競争上不公平にならないようにすることも可能だろう。つまり個人の意識が確立された「市民」としての協力より、会社という「家」の一員としての集団行動である。 「経済が麻痺することを避けるべき」という意見もあるが、「感染爆発」や「医療崩壊」が起これば、それこそ一時的な麻痺では済まない。数週間を失うか、数十年を失うかだ。「小を捨て大に就く」という諺がこれほど適切なときはない。