「アベノミクスは失敗」に首相が反論 雇用は本当に改善しているのか?
図は総務省「労働力調査」の求職理由別完全失業者を示したものです。 この図でオレンジ部分の「勤め先や事業の都合」というのが景気に左右されやすい部分です。この理由による失業者数は2009年には100万人を超えていましたが、ここ2年くらいは40万人ほどです。2014年頃からあまり変わっていないので、40万人前後が底だと思われます。 このように、金融市場の混乱や中国経済動向など、いろいろありますが、雇用という最重要経済指標がしっかりしているので、日本経済は全体としては悪い状況にはありません。「ファンダメンタルズは堅調だ」というのはその通りだと思います。
なぜ雇用の指標が改善したのか?
では、アベノミクスという政策で雇用が改善したのかというと、必ずしもそれだけでないでしょう。雇用改善のキーワードはいくつかあります。年齢については、「若者」と「高齢者」。性別では「女性」、産業別では「医療・福祉」です。 男性の失業者数を年齢別にみると、アベノミクスが始まってから40代や50代の失業者数はほとんど変化していないのに対して、若者と60歳前後では減少しています。例えば、25~34歳の完全失業者数(季節調整、男性)は2013年2月に45万人でしたが、今年の2月の統計では27万人へと著しく減少しました。一方で、45~54歳では、それぞれの時期で28万人、25万人とあまり変化が見られません。 女性も年齢別では似た状況ですが、男性と比べるとより就業者が増えています。現在の雇用改善の継続は女性の労働がカギとなっています。 次の図は男女別の労働力人口と就業者数の推移を示しています。労働力人口というのは15歳以上で「働く意思のある」人の数です。そのうち、就業者は働いている人なので「労働力人口=就業者数+失業者数」という関係になります。
少子高齢化に伴い、働く人の人口は減っていくはずです。実際に男性の労働力人口は1990年代終わりから減り続けています。ところが、女性の労働力人口は、ちょうどアベノミクスが始まった頃から目に見えて増加しています。それとともに就業者数も増加しています。 ちなみに、男性の就業者数はアベノミクスが始まった頃から横ばいで、労働力人口が減少する中でも維持されていることになります。 このように女性で働く人が増えているのは、アベノミクスとタイミングが同じであるものの、その政策や景気改善とは関係が強いとは思えません。高齢化による医療・福祉分野での労働需要増加が主な要因で、これは、特に団塊世代の高齢化が背景にあります。