「アベノミクスは失敗」に首相が反論 雇用は本当に改善しているのか?
「アベノミクスは失敗した」と野党が攻勢を強めています。それに対して、安倍晋三首相は「雇用は改善している」と反論しています。雇用は実際に改善したといえるのでしょうか。現状に課題はないのでしょうか。岡山大学経済学部教授の釣雅雄氏に寄稿してもらいました。
「ファンダメンタルは堅調」といえる指標
アベノミクス下で、実質賃金の低下がみられるものの雇用は改善が続いています。 雇用改善は賃金上昇よりも重要です。収入が減少しても生活は維持出来ますが、失業によって収入が途絶えてしまえば状況は非常に厳しくなります。インフレ率はなかなか目標どおりになりませんが、雇用が改善しているので、アベノミクスへの賛否が分かれているのではないでしょうか。 さて、現況は、2016年2月の完全失業率(季節調整値)が3.3%で、失業者は216万人です。振り返ると、最近では、2009年7月の最も高い5.5%の失業率で、失業者数は364万人でした。この間に失業者が152万人減少しています。また、2013年1月の失業率は4.2%で、失業者は277万人でしたので、アベノミクス下でも失業者はおよそ65万人減少しました。 私は数を想像するとき、よくコンビニと比較しますが、65万というのはコンビニ数の約13倍です。近くのコンビニに13人のお客さんがいて、さらに、どこへ行っても同じだけの人がいると想像し、その人たちが失業を逃れたと考えると、かなりの数だと実感できるのではないでしょうか。 有効求人倍率はこの2月に1.28倍でした。有効求人倍率は、職を探している人1人に対して、1.28の求人があることを意味します。分かりやすく言うと、100人の人が職を探しているのに対して、128の求人があるので、100人全員が就職してもまだ28の求人が残る状況です それでも失業者が216万人もいると思うかもしれません。けれども、現状では不景気による失業は、ほぼ消えています。景気状況にかかわらず、定年、自己都合、新たに求職など一定数の失業はいつでもある程度発生しています。例えば転職することは悪いことではないので、雇用が固定されるような失業者数ゼロ状態が望ましいわけではありません。