大阪・堺に国内唯一のミュシャ美術館 アートとしての魅力発信
19世紀末、華やかなパリの芸術文化を先導し、日本にも影響を与えたチェコ出身の画家ミュシャ。堺市にある「堺アルフォンス・ミュシャ館」はミュシャを専門とする国内唯一の美術館だといい、学芸員の原田悠里さん(35)は「当時の時代背景や、表現の意図を感じに来てほしい」と話す。(共同通信=稲垣ひより) ミュシャは1860年チェコ生まれ。パリで画家を志し、繊細な曲線や装飾で女性を描いた演劇のポスターを制作すると、当時流行していた「アール・ヌーボー」の旗手として、一躍注目を浴びた。 これまでになかった作風は日本にも波及した。堺市出身の歌人、与謝野晶子の歌集「みだれ髪」の表紙は、ミュシャに影響を受けたハート形にうねる女性の髪が特徴的だ。 一方、広告のデザインで有名になったミュシャの作品は美術界では長年アートと見なされなかった。原田さんは「作品に込められた芸術性を大人から子どもまで伝える取り組みをしていきたい」と意気込む。
ミュシャ館は普及活動の一環として、子どもが遊びながら作品を鑑賞できるパズル「Mu―CUBE(ミュー・キューブ)」を関西大と開発。木製の立方体の面それぞれにミュシャの作品が印刷されており、絵を合わせながら細かい描写を観察してもらうのが狙いだ。市立小学校を対象にパズルなどを使った出前授業を実施している。 「美術に触れるきっかけになれば」と原田さん。出前授業では、絵を見てタイトルを考えたり、曲線を意識してモデルのポーズをまねしてみたり。想像力を膨らませる取り組みが好評だという。 ミュシャ館は、堺市にゆかりのあった個人のコレクションの寄贈などを受け、2000年に開館。現在の収蔵作品数は約500点に上る。 現在は、企画展「アフィショマニ!ミュシャマニ!」を開催中。当時のパリのポスター文化や、マニアの収集熱に触れられる作品を展示している。12月1日まで。問い合わせは同館、電話072(222)5533。