2期目のトランプ大統領は“無双状態”に突入! 3つの主要政策を背景としたドル高・円安シナリオ実現か
■「円キャリートレード」再燃で円安が加速?
実はもう1つ、円安の要因として挙げられるのが「円キャリートレード」の復活です。円キャリートレードとは、金利の低い日本円で資金を調達し、その資金を米ドルに換えてリスク資産などに投資を行う取引のこと。この円キャリートレードは日銀の超低金利政策を背景に膨張し、長期的な円安・ドル高相場の要因になってきました。 2024年7月末の金融政策決定会合で、日銀は同年3月に続く追加の利上げを実施しました。この追加利上げを契機に円キャリートレードが急速に巻き戻され、8月5日の相場暴落、いわゆる「令和のブラックマンデー」につながったとの見方があります。「巻き戻し」とは、それまでの取引とは反対の売買のことです。この場合、「円を売った資金でドルを買う」取引の反対売買なので、「ドルを売って円を買い戻す」動きです。 「令和のブラックマンデー」によって、同トレードの大部分は解消されましたが、その後、「日銀が継続的な利上げに打って出ない可能性」と、「米FRBの利下げに対する慎重姿勢」が重なり、市場では円キャリートレードが復活する可能性が高まりつつあるようです。この先、同トレードが再度増え続けるかはわかりませんが、2024年9月以降の円安局面は、円キャリートレードの再燃が要因との見方もあります。 トランプ氏の主要政策と、この「円キャリートレードの再燃」によって、少なくとも米国で次の中間選挙が行われる2026年までは、円安・ドル高傾向が続く可能性があります。バイデン政権は米国内のインフレを抑えられなかったことで評価を下げました。もし、トランプ氏がインフレを抑制できなければ、バイデン政権と同じ道筋をたどることになるでしょう。この場合、中間選挙に向けて方針転換を迫られるかもしれません。 また、トランプ氏の政策によって米国内のインフレが加速し、それによって「米国経済の落ち込みでドル安(円高)が進行する」というシナリオも念頭に置いておくべきです。為替相場を気にするなら、①トランプ氏がインフレ加速を抑制できるか、②中間選挙後も「トライフェクタ」状態を維持できるか、をチェックしておく必要があるでしょう。
新井奈央(ライター/編集者)