2期目のトランプ大統領は“無双状態”に突入! 3つの主要政策を背景としたドル高・円安シナリオ実現か
■保護主義政策でインフレ圧力が増大
トランプ氏が掲げる主要政策の中には、「保護貿易」「移民抑制」「大型減税」など米国内のインフレにつながるものが目立ちます。これらの政策に寄ってインフレ圧力が高まれば、長期金利の上昇や政策金利の引き上げ(利上げ)につながるため、ドル高・円安方向に進みやすいといえるでしょう。 まず、「保護貿易」について。トランプ氏が1期目の時に中国の為替操作や、補助金を使った中国国内企業の優遇策を批判し、追加関税の措置を講じてきたことは広く知られています。当然、それは今職でも引き継がれるでしょう。実際、貿易相手国に対して10%~20%、中国に対しては60%程度の追加関税を行うと公約に掲げています。11月26日、トランプ氏は「就任式の直後に、中国政府が合成オピオイド(麻薬性鎮痛剤)の一種であるフェンタニルの密輸を食い止めるまで、中国製品に10%の追加関税を課す」と発言しましたが、これはほんの手始めといったところでしょう。 2023年は、米国の対中国輸入が前年比20.3%減と大幅に縮小し、その結果、米国の貿易赤字額は大幅に縮小しましたが、対中国の貿易赤字が継続的に減らないようなら、追加の関税引き上げ策に打って出るでしょう。トランプ氏は、中国以外の国・地域に対しても関税引き上げ、要は保護貿易政策を強化する方針です。これによって米国内の輸入品の価格が上がるため、インフレ圧力が強まります。 また、保護主義政策によって、民間企業はサプライチェーン(原材料や部品の調達から製造、流通、販売までの一連の供給網)を再構築する必要がある(たとえば、中国から仕入れていた原材料や部品を、別の国の企業から仕入れるようにするなど)ので、これも「製造コスト上昇→インフレ」の要因です。
■移民抑制策は明確なインフレ要因
続いて、移民抑制策について見てみましょう。トランプ氏は前職時に、中南米からの不法移民を抑制するため、メキシコ国境に壁を作るための大統領令に署名しました。実際、トランプ氏の前職時代には新型コロナのパンデミックの影響もあり、移民数は急減。次のバイデン政権では、バイデン大統領が就任初日に「もう1フィートも壁は作らない」と表明し、壁の建設中止を声高らかに宣言しました(移民数が急増したため、バイデン氏は慌てて2023年に壁の建設再開を表明)。トランプ氏は今回の大統領選挙でも「必要に応じて州兵や軍を動員して強制送還に着手する」と発言するなど、強い口調で移民抑制策を主張しています。これによって、移民数は再び大きく減少する可能性が高いでしょう。移民数が減少すれば、米国内では人手不足が加速し、インフレ圧力が強まることになりそうです。 米FRB(米連邦準備制度理事会)は、自国の経済をソフトランディングさせるため、いまのところ政策金利の引き下げに対して慎重な構えを見せています。仮に、国内でインフレ圧力が急激に高まれば、利下げどころか利上げすら考えざるを得なくなるでしょう。利上げは、日米金利差の拡大につながり、円安・ドル高の要因となります 大型減税について、トランプ氏は前職時に行った個人所得税の減税(トランプ減税)の恒久化と、法人税率を21%から15%に引き下げることを公約として掲げています。この減税が実行された場合、2025年から2035年までの10年間で、米国の財政赤字は7.5兆ドル(約1125兆円)まで膨れ上がると試算されています。財政赤字の拡大は長期金利の上昇につながるため、ドル安・円高の流れを生みやすいでしょう。