大晦日「終夜運転」中の人に聞く〝裏側〟なぜ40年以上継続?乗務員おすすめの楽しみ方も…鉄道会社の想い
「アイドルのライブ」意外な需要も
また、利用は初詣に限った話ではない。 「コロナ禍によって大晦日のイベントは減少してしまいましたが、以前はアイドルの大晦日ライブなどがある際は、24時過ぎにたくさんのお客様が都心から帰られました。そうした大晦日イベントを楽しまれた方が、比較的すぐに帰れるように京王電鉄では60分間隔で運行するようにしています」(阿部さん) JR東日本が終夜運転を行っているため、新宿まではたどり着くことができる。だが、そこから先の私鉄が動いていなければ、始発まで足止めとなってしまう。早く帰って、自宅でのんびりしたい沿線在住の人にとっては、こうした痒い所に手が届く配慮はとても助かるはずだ。 「弊社は日本一のサービスを提供する鉄道を目指しておりますので、大晦日~元旦と言えども品質を落とすわけにはいかないなと。お客様に気持ちよく大晦日、元旦を過ごしていただけたらと思っています」(猪野さん) 地域住民のインフラとして大晦日~元旦という特別な時間をつなぐために、レールの上を文字通り“奔走”するのだから、頭が下がる思いだ。 前出の猪野さんは、終夜運転ならではの空気感があると話す。 「弊社を利用されるお客様は、通勤通学の方が多いため、いつもは慌ただしい雰囲気があります。ですが、大晦日から三が日にかけては、お客様の動きがゆっくりされていて、空気も和やかですね。家族連れの方、友人たちと楽しそうにされている方、この時期だけの時間が流れています」 たしかに、このときばかりは駆け込み乗車をする人も少なそうだ。のんびりと思い思いに新年を楽しみたい。そんな人々を乗せて、電車は終夜運転されている。 でも――。それだけみんながゆっくりしているのだから、「お二人も休みたいと思いませんか?」と水を向けてみた。「う~ん」と少し考え込んで、「それが当たり前になっているので、年末だから休みたいという気持ちはないですね」と、猪野さんも阿部さんも揃って笑う。 「私が本社勤務だったとき土・日・祝日に家にいるから、逆に家族からは『どうしているの?』と思われたくらい(笑)。大晦日の夜は、駅でたくさんのお客様が降りていく様子を見守る方がしっくりくるんでしょうね」(猪野さん)