虎の“怪物新人”佐藤輝明は「打たされている」のか…OP戦の本塁打記録はシーズンの結果に直結しないというデータ
さらに新人記録で見れば、前出の佐々木氏の1年目は故障もあって打率.246、5本、12打点に終わり、大豊氏も打率.233、14本、36打点の成績。佐々木氏は7年目の首位打者、大豊氏も6年目に38本塁打でタイトルを獲得しているが、そこまでに時間は要した。 逆に31本の新人最多タイ記録を作った西武時代の清原和博氏のOP戦での本塁打はゼロだった。 里崎氏は佐藤の結果の裏に見え隠れしているOP戦の特殊事情を説明する。 「佐藤は軸で打つスタイルでポイントも近く打撃フォームが崩れない。そしてパワーもある。どのコース、どの球種に対しても同じ形でフルスイングできて逆方向にも飛ばせるのが特長でしょう。でも一方で、今は打たされているという可能性もあるんです。オープン戦で、同一リーグの対戦の場合、外国人や新人などデータのない新戦力に対しては、まず打たせるんです。ここに投げれば打たれる、こういう反応をしてくる、というのが、まず知りたいデータなんです。そこから崩す対策が見えてくるからです。どこに投げれば抑えられるかではなく、どこに投げれば打たれるか、が対戦する側からすれば、もっとも知りたいデータなので、打たれた広島、巨人は、逆にいい材料を手にしたということになるんじゃないですか」 阪神の場合、オープン戦期間中に「打たされた」典型は2001年のクルーズだろう。オープン戦は打率.385、7本塁打、14打点とバカ当たりして、勢いのまま開幕2戦目の巨人戦では勝ち越し2ランを放ったが、その後は、各球団に対策をされて打率は急降下。怪我もあったが、終わってみれば70試合、打率.234、14本塁打、34打点で退団。2003年に中日に入団したが、打率.222、11本塁打、34打点に留まり、4番の責任は果たせなかった。 佐藤の4本の本塁打はすべて真ん中から外寄りの甘いストレートを逆方向に打ったもの。リーチを生かした打撃スタイルで、そこが“ツボ”であることは浮き彫りになった。 前阪神2軍チーフコーチだった評論家の高代延博氏も、14日の巨人戦でのバッテリーの配球には「テストの意味合いが濃い」と見た。 「真剣に打ち取りに行ったのなら佐藤が得意とする外角へストレートは投げないでしょう。この後の打席では、左腕の戸根が変化球の対応がどうかを試していましたね。佐藤の傾向を読み取った意味で打たれた巨人にとって収穫は大きかったんじゃないですか」