浜風を制する者がタイトルを制する…阪神“怪物新人”佐藤輝明が甲子園アーチスト条件をクリア?!
阪神のスーパールーキー佐藤輝明(21、近大出)が10日、甲子園で行われたオープン戦の広島戦で本拠地初アーチを放った。意義があるのは逆方向の左中間に放り込んだこと。左打者にとって不利な“浜風”が吹く甲子園で本塁打を量産するためには、逆方向への本塁打を必須だが、佐藤は、その条件をクリアしそうなのだ。桑田武氏(大洋)、清原和博氏(西武)が持つ31本の新人最多本塁打記録を破ることへの期待が高まっている。
甲子園の浜風に乗せて左中間へ
甲子園球場のバックスクリーンの上に設置されたフラッグがパタパタとはためいていた。風はライトからレフトへ。甲子園名物の浜風である。5回二死二塁。広島2年目のスコットが2球目に投じた145キロのツーシームが、ど真ん中に来るとトラのルーキーは見逃さない。ブンとひと振りすると打球は高々と舞い上がった。浜風に心地よくのった打球は、観客の入っていた左中間スタンドへ。甲子園はざわめきに包まれた。 「ツーシーム。甘いボールをしっかり捉えることができてよかった。この甲子園でファンのみなさんの前で初めてホームランを打つことができてよかった」 佐藤は、打った瞬間、ホームランの手ごたえがあったという。 来日1年目にストッパーとして期待されていたスコットは制球が定まらず結果を残せなかったが、オフにフォーム改造したことで制球力がつき、しかも球種も増やしたことで評価は激変していた。その2年目の助っ人から打ったのだから価値がある。しかも広島は開幕2カード目にぶつかる相手。佐々岡監督は、試合後、番記者に「いい打者だ。今から対処しないと」と語り、警戒を強めていたそうだが、敵将をそんな気持ちにさせてしまう内容だった。 沖縄宜野座キャンプ序盤の打撃練習で首脳陣をうならせたのは、逆方向への打球だった。センターから左への打球がとにかく伸びる。広島の佐々岡監督も打撃練習を見ていて逆方向へいい打球を飛ばすことが気になっていたそうだが、この日のアーチは、出るべくして出た一発で、たまたま逆方向に飛んだものではない。 浜風を制するものはタイトルを制するーー。 甲子園球場を本拠地とする阪神で、左打者が本塁打タイトルを獲得するには「逆方向に本塁打を打てること」が必須条件である。3度本塁打王を獲得した掛布雅之氏も、2度の“三冠王”を獲得したランディ・バース氏も、浜風に乗せ逆方向への本塁打が打てた。