社会保険改正による新しいルール「パート主婦・フリーランスも社保強制加入へ」年収106万円の壁
2024年2月から7月にかけて、年金局による「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」が実施されました。 ◆【写真4枚】社保適用チェックリスト&月額8万8000円で1年間勤務をした場合の年額の手取りと年金額はいくら? そこでは、現状の日本の労働者の働き方に関する話し合いと、今後の社会保険適用の流れや必要な検討事項について話し合いがされています。 今回は、そこで話し合われた内容も踏まえ、社会保険の改正について説明をしていきます。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
社会保険改正の背景
今回お話をする「社会保険改正」とは、「社会保険制度が適用となる労働者の範囲を拡大させ、社会保険加入となる労働者を増やすこと」です。 この改正の背景として大きくあるのは、労働者の働き方の多様化です。 兼業や副業など、様々な働き方がある社会において、各労働者にふさわしい保障を実現するとともに、働き方の選択に中立的な社会保障制度の構築を進めることが求められ、検討された結果、社会保険の適用範囲を拡大するという今回の改正に至っています。
2024年10月からの非正規雇用者(パートなど)の社会保険加入
2024年10月からは従業員数50人を超える企業において、社会保険制度の適用範囲が拡大となります。 これにより、2024年10月までは従業員数が100人超の企業に義務とされていた社会保険の適用が、より多くの企業に適用されることとなります。 適用範囲が拡大となることで社会保険の対象となる従業員は、「週の所定労働時間が20時間以上・所定内賃金が月額8万8000円以上・2ヶ月を超える雇用の見込みがある・学生ではない」という条件を満たす全ての労働者です。 この改正により、新たにおよそ20万人の労働者に社会保険の加入義務が生じることが見込まれています。
年収の壁(106万の壁)を超えるとどうなる?
2024年10月以降に、従業員50人以上がいる企業に雇用される従業員が年収106万円(月額8万8000円)を超えた働き方をした場合、企業には該当の従業員を社会保険に加入をさせる義務があります。 そのため、たとえば配偶者の扶養になっていた場合でも、扶養の資格を喪失して自身で社会保険に加入することになります。 配偶者の社会保険上の扶養となる条件は年収130万円未満です。ですが、年収106万円を超えた場合、勤める会社によっては社会保険に加入することになるため、そちらが優先となり扶養からは外れることになります。 社会保険に加入をすると、給与から健康保険料と厚生年金保険料が控除されるため、損をしたと感じる方も多いかもしれません。ですが将来的には、配偶者の扶養であっても加入期間とされる老齢基礎年金に加えて、月額の報酬と加入月数によって老齢厚生年金の額が増加されてくることになります。 簡単に、月額8万8000円で1年間勤務をした場合の、年額の手取りと年金額を試算してみましょう。 【勤務条件】 ・勤務地:東京都 ・加入保険:全国健康保険協会 ・年齢:30歳代(介護保険料なし) ・月額報酬:8万8000円 【月額の社会保険料】 ・健康保険料4391円 ・厚生年金保険料8052円 【手取り給与(年額)】 (8万8000円△4391円△8052円)×12ヶ月=90万6684円 【受取年金額】 8万8000円×5.481/1000×12ヶ月=年額約5788円 ※老齢基礎年金については、配偶者の扶養に入っていたとしても個人で国民年金を支払っていたとしても将来の手取りが変わることはないため、今回の試算では考慮していません。 ※計算において、従前額保障は考慮していません。 年間14万9316円(社会保険料×12ヶ月分)の負担により、将来受け取れる厚生年金保険料の金額が年間約5788円増額となります。 つまり、元をとるためにはおおよそ26年間は年金を受け取ることが必要です。