引き分けの裏で何が…なぜ横浜DeNAラミレス監督は9回一死満塁でマウンドへ向かい山崎康晃にどんな檄を飛ばしたのか?
山崎は「勝負」のピッチングを見事に表現した。 初球に148キロのストレートをインハイへ投じた。それが「逃げない」という意思表示だった。2球目はツーシームが甘く浮き、ボールが2つ先行、続く3球目のツーシームもうまく落ちなかったが、村上は、それを打ち損じてファウルにした。満塁での打率は5割。2日の広島戦では、サヨナラ満塁本塁打も放っているが、昨年の新人王の村上は、今季全打席をフルスイングで本塁打を狙うのではなく状況に応じてコンタクトに主眼を置きヒット狙いに切り替える柔軟さを持つようになった。まさに、この打席の意識は、そうだったのだろう。 山崎はツーシームでもうひとつストライクを取り、カウント2-2から勝負した。選んだのは、インサイドへの148キロのストレートである。だが、ボールになった。村上は反応していなかった。フルカウントになった。併殺を狙いたいというセオリーから言えば、次のボールは得意のツーシームである。おそらく村上の頭には、そのボールがインプットされていた。 だが、山崎-嶺井バッテリーが選択したのは、またストレートだった。嶺井は、外角低めに構えていたが、ボールは“逆球”…真ん中高めに向かった。しかし、「おし!」と声を出して投げたボールは気迫に満ちていた。裏をかかれた村上のバットは空を切った。 「いい攻め方をした。そのプラン通りによくやってくれた」 ラミレス監督はベンチから拍手。山崎は続く荒木もツーシームでショートゴロに仕留めるとニコリともせずマウンドを降りグラブを一度だけ叩いて喜びを表現した。 「彼なら抑えられる、切り抜けられると信頼してマウンドにやった。見事に仕事をやってのけてくれた。今後も、クローザーとしてずっとやっといけると思う」 ラミレス監督は今後も山崎をクローザーで起用することを断言した。 救援に失敗した19日の巨人戦ではボールが走っていたが、この日は、ツーシームがキレていなかった。代打の山崎に、ボールになるツーシームを芸術的に拾われ、山田、青木には連続四球を与えるなど、まだ本調子ではない。しかし、その経験値とプライドにラミレス監督は、チームの浮沈を預けるつもりなのだろう。