国内絶不調のマツダが高級SUV「CX-80」に託す希望、2年ぶり国内新車で競合ひしめく市場に参戦
そうした構造が欧米メーカーを苦しめている。世界販売台数100万台強で投資余力も限られるマツダのような小規模メーカーは特に、既存車種でしっかり稼げるかが大事になってくる。 マツダは「2030経営方針」として掲げる中長期ビジョンで、2025~2027年を「電動化へのトランジション」のフェーズと位置付けており、後半に中国からEV専用車を導入していく計画だ。電動化への本格転換が迫る中、利益の源泉と位置付けるのがラージ商品群となるのだ。
日本でのラージ商品はCX-60とCX-80の2車種。前述のようにCX-60が躓いた分、CX-80が担う役割は大きくなる。ただ、CX-80が日本でどれだけ売れるかは未知数だ。 マーケットにはライバルがひしめいている。 サイズ的にはトヨタの「ランドクルーザー」、価格ではトヨタの「クラウンクロスオーバー」「ハリアー」、三菱自動車「アウトランダー」、廉価グレードなら、ホンダ「ZR-V」のハイブリッドモデルなども重なってくる。
東京郊外でマツダ車を扱う販売店の代表は、「普通に考えると、同価格帯なら消費者はトヨタ車を買うのではないか」と冷静に分析する。価格に対する消費者心理が厳しくなる中で、“高価格なマツダ車”がどこまで受け入れられるか。 ■業績は好調だが各市場に暗雲も 業績だけを見るとマツダは目下、絶好調だ。 2023年度は営業利益と純利益で過去最高を叩き出した。2024年度第1四半期(4~6月)も、超円安の恩恵を享受して販売台数は横ばいながら営業利益は前年同期比68%増の504億円だった。2024年度通期でも営業利益は最高益を予想する。
しかし、主力のアメリカ市場は大統領選挙の結果次第で先行きが読めない。中国では販売台数を大きく落としている。マツダにとって日本は世界販売全体の約1割に過ぎないが、販売の落ち込みを放置していいわけではない。 マツダはEV戦略では「意思あるフォロワー」と自称してきた。2030年まではフロントランナーにならずに「新技術を真摯に学んで蓄積し、技術開発もしながら」(毛籠社長)、段階的に電動化を進めていく計画を立てている。世界的なEVの減速を考えると、この戦略は今のところ正解だったと言える。
ただし、ラージ商品群で躓いてしまえばフォロワーにさえなれない。マツダが将来に向けて加速できるか、CX-80とラージ商品群がそのカギを握っている。
村松 魁理 :東洋経済 記者