「運がよくて受賞できた」第168回芥川賞の佐藤厚志さん会見(全文)
戸惑いが大きいのか、それとも不思議な喜びが大きいのか
記者:毎日新聞の関と申します。このたびは、おめでとうございます。 佐藤:ありがとうございます。 記者:2つお聞きしたいんですけれども、先ほどのお話のまず延長になってしまうかと思うんですが、書店員としての喜びの声というのが先ほどありましたが、あらためて、これまで書店員として見守る立場、楽しみに待つものだった芥川賞に、自分が選ばれて今この壇上に立っていること、戸惑いが大きいのか、それとも不思議な喜びが大きいのかとか、その辺の率直な思いと、あと、今回4作選ばれました。多種多様な作品が光が当たったかなと思うんです。この4作選ばれたことについて何か書店員として思うところがありましたら、それも併せてお聞きできればと思います。 佐藤:ごめんなさい、最初の質問なんでしたっけ。 記者:今まで楽しみに待つ立場だったところが、この壇上に立ってみていかがでしょうか。 佐藤:特に戸惑いとかはなく、本当になんかもう、いきなりばーんって今回がノミネートされたというよりも、デビューして僕もう5年もたってるんで、じわじわ来たという感じで、なんか、やっとっていう感じがすごく大きくて、特に大きな感動とかはないんですけどね。 4作選ばれたっていうことに関しては、本屋としては、やったーっていう感じ、みんないろいろ手に取って読み比べていただければいいなというふうに思ってますね。
多くの人に読まれることについて思うことがあれば
記者:あともう1つ。今回の作品、東日本大震災というのが背景にあると思いますし、あると語られていますけれども、同時に、作中で災厄という言葉が使われているように、特定の、12年前の震災だけでなくて災厄一般を描きたいという思いもあったのかなと思いますけども、今回このように受賞されて光が当たって多くの人が読むことで、その辺り、それこそ多くの人に届いて、そういうふうに感じる方も増えるのかなと思いますけど、ちょっと漠然とした聞き方ですけども、そういう意味で今回多くの人に読まれることについて、何か思うところがありましたらお聞かせ願えますでしょうか。 佐藤:さっきもちょっと触れたみたいに、東日本大震災を受けてこの小説を書いたというところもあるんですが、作品に災厄という言葉で表現されてるみたいに、本当に、日本はいろんな災害、もう本当にしょっちゅう起こるので、起こるし、そのときに自分が経験したこととか味わったことっていうのは1人1人本当に違うので、だから、その作品、もし触れて、なんて言うか、自分の経験とかと重ね合わせて、もちろんそれは痛みとかあるかと思うんですけども、その中に、なんて言うか、癒やしの部分をちょっとでも感じてもらえたらいいかなというふうに思ってますね。 記者:分かりました。ありがとうございます。 佐藤:はい、ありがとうございます。 司会:はい。次の方、いかがでしょうか。じゃあ、はい。