日産が「モノ言う株主」の食い物にされる日…「売れる車がない」「安易なリストラ」の元凶はゴーンか現経営陣か
● 「モノ言う株主」の増加も大きな懸念点 今般発表した工場閉鎖などを行うと、生産能力は400万台規模になるだろう。一方、24年度の生産台数着地見通しは320万台である。決算資料によると、収益が減少する一方で在庫は積み上がっている。 このままだと、日産の事業運営はより厳しくなるだろう。懸念は、アクティビスト(モノ言う株主)の存在だ。今後、日産株を取得した上で、リストラの追加や目先のフリーキャッシュフローの増加策などを要請するアクティビストが増える可能性は全く否定できない。 企業がリストラだけに頼って、持続的な成長を目指すことはできない。資産の売却や人員の削減を続けると、最終的には事業運営に必要なリソースを維持できなくなる。従業員の士気は低下し、売れるクルマを創造することは難しくなるだろう。こうした悪循環だけは、避けなければならない。 わが国の主要自動車メーカーの事業戦略は、米国や中国などの主要市場で合弁事業を増やし、エンジン車から電動車、燃料電池車など全方位の戦略で需要の取り込みを狙うものが多い。日産の経営陣は、リストラによって得た資金をモノづくりの実力回復に振り向けるべきだろう。 そうした取り組みが遅れると、日米中の主要市場において、日産が一段と落ちぶれてしまう恐れがある。中国では不動産バブル崩壊などの影響で、デフレ圧力が高まっており、景況は非常に不透明な状況が続きそうだ。トランプ次期政権下、米国が世界各国に対する関税を引き上げるなど、日産の米国事業の収益性が低下する恐れもある。 そのような展開が現実になると、日産の経営陣は、アクティビストを含めた株主、従業員、消費者、工場が立地する地域社会など、さまざまな方面への利害を調整することが今よりもさらに困難になるはずだ。 わが国の経済は足元、設備投資などを支えに緩やかに持ち直しつつある。日産の経営不安が高まると、部品や工作機械をはじめ広範な分野に下押し圧力がかかるだろう。日産がかつてのDNAを取り戻すことができるか否か、経営陣の能力が問われている。
真壁昭夫