ドジャース「キケポーズ」と盆踊りの共通点、連帯感を強める「幸せの脳内ホルモン」とは?
● “皆で踊る”日本の盆踊りが 幸福感に満ちた場である理由 もちろん運動やダンスなど体を動かすこと自体で、自尊心を高めるホルモン「テストステロン」を上昇させ、逆にストレスホルモンであるコルチゾールが低減するという研究は数多くあります。しかし、今回の実験ではそれに加えて、他人と一緒にシンクロしながら踊ることでエンドルフィンが分泌されることが分かりました。 おそらく、ドジャースの選手たちも毎試合短い時間でも皆で「キケポーズ」を踊ることでエンドルフィンが分泌され、チームの一体感の高まりに何らかの貢献をした可能性があるのではないでしょうか? ウェルビーイングにおいて重要な「他者との関係性」がこの踊りという行為に関しても大きな意味を持つということは非常に興味深いと思います。 世界中の至るところに“皆で踊る”という文化風習がありますが、それが人々のウェルビーイングの実現に大きな役割を果たしていたという事実は、太古より人は幸せを求めていたということを改めて示しています。 まさに、日本の夏の名物である盆踊りは、町内が連帯感を持って楽しむ幸福感に満ちた場であるということです。 「阿波踊り」「西馬音内盆踊り」と並ぶ日本三大盆踊りである「郡上おどり」は、岐阜県郡上市の郡上八幡のまちを中心に、江戸時代から続く盆踊りです。若者からお年寄りまで、熱狂的なファンが多く、誰でも踊りの輪に飛び込んで参加できるこの場は、今では貴重となった「徹夜踊り」の民俗を継承し、お盆の4日間を連続で踊り明かすのが特徴です。 実験で明らかになったように皆で踊ることによって分泌される「エンドルフィン」がある種のトランス状態をもたらし、4日もの間、踊り続けることを可能にするのかもしれません。
● オフィスで毎朝行われていた 昭和の時代の“ダンス” 昭和の時代は、オフィスでも毎朝皆が同じ“ダンス”をするという習慣が多くの会社でも見られました。40代後半以下の読者の方々には、ほとんどなじみがないかもしれませんが、それがラジオ体操です。 1928(昭和3)年にかんぽ生命保険の前身である逓信省簡易保険局が先駆けとなり、国民の健康保持推進のために「国民保健体操」を制定し、普及が始まりました。 昭和初期はまだテレビはなく、ラジオも一家に一台とはいかない時代です。ラジオの号令や図解だけでは伝わらない体操の動きを練習し、人々に伝えたのは全国の郵便局の郵便局員だったそうです。現在、私たちになじみのある「ラジオ体操第1」は、1951年(昭和26年)に始まった3代目のラジオ体操です。 このラジオ体操を毎朝オフィスで皆と踊ることが、終身雇用制度のもとで職場の仲間と長い時間を共にする日本型雇用において、チームメンバー同士の絆を育み、組織のウェルビーイングに何らか影響を与えていたとも考えられるかもしれません。 歌と踊りは、太古の昔から人間のコミュニティにおける祝祭の場にいつもありました。有名な作家であるVicki Baum氏は、「ダンスは、人間が幸せになるための近道の一つだ」と言っています。 またZ世代がいま人気だと思う部活No.1は「ダンス部」だそうです。確かに最近では、TikTokなどで友達同士が「踊ってみた」動画がバズる現象をよく見聞きします。 このように同じ踊りを皆で踊るというシンプルな行為は、特に若い世代が未来に希望が持ちにくい閉塞感漂う今の日本社会における、ウェルビーイング実現のために案外有効なのかもしれません。 (インテグレート代表取締役CEO 藤田康人)
藤田康人