鮮烈F1デビューのコラピント、不況にあえぐ母国アルゼンチンを熱狂。マラドーナ、メッシに続く“国民的ヒーロー”に?
急上昇する国民の期待に応えられるか?
アルゼンチン政府もまた、コラピントの鮮烈なF1デビューに便乗するチャンスをいち早く察知。ダニエル・サイオリ観光相はアルゼンチンGPの復活計画を発表した。 「私はハビエル・ミレイ大統領とF1誘致について話をした。私が何とかするつもりだ」とサイオリ観光相は国際観光連盟主催のイベントでそう語った。 「間違いなく、我が国にF1を誘致するための話し合いは既に進められている」 アルゼンチンでのグランプリ復活はしばしば夢物語と考えられてきた。しかしサイオリ観光相の代表団はサンパウロGPに足を運び、F1と検討協議を行なう予定だ。 国内の経済状況や、現在のF1誘致の世界的な需要の高さを考えると、アルゼンチンGP復活は激しい競争にさらされ、民間の資金に頼らざるを得ないだろう。 ウイリアムズが来季はアレクサンダー・アルボンとカルロス・サインツJr.というふたりのドライバーを構えると既に発表しているため、コラピントのF1参戦は現状2024年限り。長期的なF1での将来が確約されていないことを考えると、サイオリ観光相の主張は政治的な影響力を追い求めるモノだとの見方もある。 ウイリアムズが今後数年間、コラピントをザウバーに貸し出すなどF1キャリアが軌道に乗れば、彼を取り巻く熱狂の渦は時間と共にますます大きくなるだろう。コラピントにとってもウイリアムズにとっても、状況が上手く進んでいる限りはプラスに働くが、チームやコース上でライバルとの関係が悪化した場合には懸念もある。 今年初め、ザウバー育成ドライバーでインディカーに参戦していたテオ・プルシェールは、デトロイトGPでアルゼンチン出身のアウグスティン・カナピーノと接触し、ソーシャルメディア上で殺害予告を受けた。 カナピーノはツーリングカーで名を馳せ、所属するフンコス・ホリンジャー・レーシングもアルゼンチンからの資金注入を受けており、アルゼンチンからの関心が高まっていた中での接触だった。2023年にはカラム・アイロットも同様の出来事に巻き込まれた。 幸い、インディカーでの出来事はごく少数のファンによるモノ。予期せぬF1デビューながらも地に足をつけて課題をこなし、大きなサポートを受けるコラピントは、新たに得た名声が何をもたらすにしても、それに対処する術を備えているように見える。 コラピントにとってグランプリ勝利はまだ遠い夢だが、少なくとも自身の誇りである母国アルゼンチンが、笑顔になる理由のひとつを見つけたことは間違いない。
Filip Cleeren
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