石川遼“まぐれのないゴルフ”でつかんだ19勝目と自信 ロングゲームの精度アップで世界の舞台も見据える
<JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品 最終日◇23日◇西那須野カントリー倶楽部(栃木県)◇7036ヤード・パー72> 【まとめて見れます】石川遼が取り組んできたアプローチ論やレッスン動画が満載 2打差の2位から出た石川遼は「68」で回り、トータル21アンダーで逆転V。2年ぶりの通算19勝目は、これまでの優勝とまたひと味違ったモノになった。 素人が見ても分かるような大幅なスイング改造を初めたのが2020年。今もその礎は変わらない。スイングだけでなくマネジメントや考え方も大きく変え、イチかバチかのショットやラッキーを期待せず“まぐれのないゴルフ”を求めて技術向上、裏付けのある攻め方を追求してきた。 ゴルフスタイルを変えて3年目の22年、「三井住友VISA太平洋マスターズ」で通算18勝目を挙げた。当時は「今までと違う勝利」と話したが、19勝目もまた異なるという。 2年前は3打差2位タイから出て序盤に首位をとらえたものの、14番のダブルボギーで後退。15番ですぐRに取り返して再び首位に並び、最後は星野陸也とのプレーオフを制した。「太平洋マスターズの時は、ずっと追いかける立場で最後チャンスが転がり込んできてモノにできた」勝利と話す。 今大会は2日目に単独首位に立ち、決勝ラウンドは常に優勝を意識しながら勝ち切った1戦。首位の重圧もありなかなか思うようなプレーができなかった3日目に2打差の2位に後退もしたが、「日頃からやっていることを発揮して、優勝できる確率を0.1パーセントでも上げていくことを3日目、4日目に意識していた」と振り返った。 象徴的だったのは、勝負を決めた残り6ホールだ。「いいゴルフができた」と胸を張る。2つ伸ばした前半で単独首位に立つ。後半の11番のボギーで首位の座を譲ったが13番、14番の連続バーディで首位に並ぶ。15番で首位に並んでいた河野祐輝が誤球などから「9」を叩いて一気に後退して再び単独トップになった。優勝争いのライバルは、1打差に迫る1つ前の組の金子駆大と田中裕基になった。 真骨頂は16番パー5からだ。前の組の状況も把握していた中で、「16番は絶対にボギーにしないマネジメント」を考えた。ボギーで自ら後退して、スキを見せることだけはしない。 ティショットは会心の当たりで319.88ヤードのフェアウェイをとらえる。グリーンエッジまで200ヤード、ピンまで225ヤードと2オンを狙える絶好の位置に運んだ。しかし、グリーンは池の中に半島のように突き出した形状で、グリーンを左右に外すとペナルティが待ち受ける。 2オンすればバーディどころかイーグルで勝負を決定づけることも可能だが、池に落とせばボギーのリスクも高くなる。石川が選択したのは、グリーンまで届かない7番アイアンだった。 グリーン手前の花道にレイアップ。25ヤードの3打目を2メートルに寄せて1パット。「ラッキー要素を排除してバーディが獲れたのは大きかった」と安全策ながらバーディ奪取に成功した。前の組の2人も5メートル以上のパットを沈めてバーディとしていたため、1打差を保って残り2ホール。 続く17番パー3は、実測147ヤード。前の2人はパーで終えていた。石川の狙いはこうだった。「ピッチング(ウェッジ)でピンの右を狙って、つかまりすぎても左は広いし、つかまらなくても2ピン(約5メートル)右で広いところに乗せられる」。ミスショットをしてもスコアを落とすことのない状況、狙いを定めると、軽いドローのイメージ通りの球筋が打ててピン手前50センチにつけて、後続とのリードを広げた。 2打リードで迎えた最終18番パー4は、左サイドに大きな池が広がる。1打目は絶対に左に行かせないように3番ユーティリティで右サイドに打った。ピンまで190ヤードのラフだったが、不運にも深い場所に埋まっていた。「ボギーで優勝とわかっていたので、確実にプレーしようと思った」と2打目でグリーンは狙わずに、50度のウェッジでしっかりフェアウェイに出した。ピンまで90ヤードの3打目は、右奥3メートルにオン。2パットで締めくくった。 「最後の6ホールはいいゴルフができました。優勝争いしているとそこでしか感じられないプレッシャーがあって、自分も試されましたし、アドレナリンも出ていました。いい空気というかプレッシャーを感じられてよかった」と勝ちにこだわった攻め方で勝ち取ったタイトル。「2日目にトップに立ってから36ホールやって優勝できたのはすごく自信になる。最後パーならもっと自信が持てた(笑)」と、これまで取り組んできたことの成果を発揮できた。 ただ前週行われた海外メジャー「全米オープン」では、予選落ちに終わっている。世界の舞台では180~250ヤードのロングゲームの精度に差を感じた。「自分のゴルフ観というかスイッチが切り替わった。自分のビジョンというものは全米オープンではっきりした」と、世界の舞台で戦うためにもロングゲームの精度アップを追求する。自信になった19勝目だが、これも石川にとっては通過点でしかない。
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