レゲエにロック・ヒップホップ、音楽聴かせて焼酎熟成…奄美の女性杜氏「ジャンルによって味や香りに違い」
「レゲエ」「ロック」「島唄」――。鹿児島県奄美市の黒糖焼酎メーカー「西平酒造」は、音楽を聴かせて焼酎を熟成させる「ソニック エイジング」に挑戦している。「音楽のジャンルによって味、香り、舌触りがそれぞれ違うんです」。4代目社長で杜氏(とうじ)の西平せれなさん(37)は目を輝かせる。
蔵には4合瓶(720ミリ・リットル)600本分の焼酎が入った樽(たる)が六つ並ぶ。それぞれにスピーカーが取り付けられ、「ヒップホップ」「ラテン」「ハウス・ミュージック」など6種類の音楽を流している。
音による振動で樽の中の焼酎が揺れる。この微妙な揺れの違いで樽に触れる面積が変わり、風味や色の付き方などに変化をもたらす――。これが西平さんらが取り組む「ソニック エイジング」の仕組みだ。耳を樽に近づけないと音は聞こえず、互いに振動の影響を受けないように設計されている。
西平さんは昭和音楽大学(神奈川県)を卒業後、東京で音楽活動を続けていた。だが、父が体調を崩したことを機に2014年に帰郷。焼酎造りを学び、17年に杜氏、21年に4代目社長に就いた。
焼酎の消費が伸び悩むなか、新たな需要を開拓する必要性を感じていた。そんな時、焼酎が縁で奄美に移住した外国人スタッフの「海外には音楽を聴かせて熟成させたウイスキーがある」「いろいろな音楽を聴かせた焼酎で『飲み比べ』ができたら」という言葉が背中を押した。「大好きな音楽を焼酎に聴かせて育ててみよう」と決め、準備期間を経て23年11月、チャレンジをスタートさせた。
1年あまりの熟成期間を経た今、試飲で効果を実感している。口に含んだ時の刺激や舌触り、飲み込んだ時の感触など、聴かせた音楽それぞれに個性を感じるという。「レゲエはまろやかな味。ロックは酸味を感じて刺激が強い。島唄は優しい味と香り。飲み比べて自分の好みを見つけてほしい」と話す。
計画は順調に進み、当初の想定よりも1年半ほど前倒しして3月、クラウドファンディング(CF)のサイトで先行販売(期間限定)する予定だ。5月頃には一般向けの販売にこぎつけたいという。