九州電が原発対象の移行債を国内初起債、総額300億円に需要堅調
(ブルームバーグ): 九州電力は28日、原子力発電所への投資を資金使途としたトランジションボンド(移行債)を国内で初めて起債した。原発を巡り市場の見方が分かれる中でも投資家からは堅調な需要が集まった。
年限5年と10年の2本立て総額300億円の発行条件を決めた。調達資金は同社の原子力の安全対策やメンテナンス、テロや航空機の墜落といった不測の事態に備えるための施設などに充当する。
日本政府が2050年までの脱炭素化(カーボンニュートラル)を目指し、放射性廃棄物の新たな処分場探しに苦戦しつつも原発使用を推進する中での起債となった。11年の福島第1原発事故以来、原子力を使途とする社債にはESG(環境、社会、企業統治)重視の投資家が慎重姿勢を示してきたが、九州電は政府の原発再稼働方針などをきっかけに風向きは変わりつつあるとみて発行に踏み切った。
主幹事の1社によると、投資家の需要は5年債が発行額100億円の3倍、10年債は200億円の1.1倍だった。10年債は金利上昇のリスクを補うため、4月に発行した10年債よりもスプレッド(国債上乗せ金利)を厚くしたという。
大和証券デット・キャピタルマーケット第3部の大津大シンジケート課長は、5年債により多くの需要が集まったことについて、「金利が付かなかった以前と比べて短い年限でも利回りを取ることが可能になったため」だと話した。
5年債のスプレッドは27ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、10年債は41bp。4月の10年債は39bpだった。
移行国債
日本では、政府が2月にクライメート・トランジション(移行)国債を初めて発行して以降、企業の移行債発行が活発化している。財務省は28日、約3500億円の10年移行国債の入札を実施した。
ブルームバーグが集計したデータによると、4-6月期の企業の移行債発行は九州電を含めて総額1750億円に達し、過去2四半期(350億円、560億円)を上回った。