アンドロイド観音にAIジーザス、テクノロジーが宗教に変革 「あなたはAIを信じますか?」
ソーシャルメディアに神々があふれ、身近な存在に 宗教の未来は奇妙な姿をしているかもしれない
米国で宗教を信じる人が減少している。これは、人口統計データを見れば明らかだ。北米全域、そして欧州でも、組織化された宗教に所属する人の数は減っている(一方、中東、南アジア、南米では状況が全く異なり、宗教は拡大している)。 【関連写真】京都の高台寺にあるアンドロイド観音「マインダー」 人々の信仰や信念、認識の変化を間近で観察してきた米ビラノバ大学神学部教授のシスター・イリア・デリオ氏も、その傾向に気づいてはいる。だからといって、神への信仰が消滅するとは思っていない。「信仰がなくなったわけではありません。別の形で現れているだけです。そのことが、神や信仰に関する疑問を私たちがどう考えるかを大きく変化させています」 その変化の大部分をあおっているのが、スマートフォン(スマホ)やソーシャルメディア、そしてAI(人工知能)といったテクノロジーだ。今、宗教的教えを見つけ出す方法や、同じ考え方を持つ人々との出会い方、そして祈り方までもが変わりつつある。誰もが持つ「大きな問い」への答えを見つけるためにロボット僧侶が人々を導き、スイスでは人間の司祭の代わりに告解部屋にAIジーザスを置く教会まで現れている。 このように新しいテクノロジーを取り入れた伝道方法で、宗教は再び勢いを盛り返すことができるのだろうか。人口統計データが示すよりもはるかに、宗教の未来は奇妙な姿をしているかもしれない。
ソーシャルメディアと宗教
データの裏には、数字だけで測ることのできない宗教の未来に関する複雑で微妙な物語が隠されている。 サイバー空間には、神や宗教があふれているようにみえる。パソコンやスマホを開けば、自分の価値観に合った宗派や宗教、または単に自分とフィーリングが合いそうな考え方を見つけることができる。 ほんの50年前、信仰に関する疑問は宗教指導者や地元の名士に相談するのが当たり前だった。「それが今では、グーグルが相談相手です」と、欧州ラビ会議の会長を務めるピンチャス・ゴールドシュミット氏は言う。 もちろん、テクノロジーと宗教の融合は今に始まったことではない。15世紀のヨーロッパで印刷機が発明され、本の大量印刷が可能になった。誕生したばかりのキリスト教プロテスタントは、これを利用して革新的な教えを広めた。一方、カトリック教会は、自分たちが異端とみなす書物を禁止しようとした。 インターネットが作り出した今の情報時代において、シスター・イリア氏は言う。「ここでは、あらゆるものが自由に手に入ります。その考え方は気に入らないからいらない、この考え方は好きだから受け入れよう、というように、選り好みすることもできるのです」 この知識の民主化が余すところなく表現されているのが、インターネットのソーシャルメディアだ。それらしいハッシュタグをつけたショート動画がプラットフォーム上にあふれかえっている。専門的な宗教訓練を受けたユーザーによるコンテンツもある。しかし、多くは、ただ投稿したい、同じような考えを持った人と出会いたい、と願う熱意ある人々によるものだ。 正しい礼拝の仕方などを教えるアプリ、イスラム教徒が祈ることのできる場所やハラール料理(イスラムの教えに沿った料理)のレストランを探せるアプリのほか、回ったり飛び跳ねたりバク転したりする僧侶が見られるアプリまである。 「これまで出会うすべがなかった世界中の宗教思想や慣習に、簡単に触れられるようになったのです」と、米ノックス大学で宗教と文化研究の特別教授職に就任しているロバート・ジェラチ氏は言う。「それは、どんなことであれ、あなたが特に気になっているものに新たな視点を与えてくれます」