「夢を持て」は逆効果?子どもの“職業観”、保護者世代との違いで意識すべきこと
「努力して成功」よりも「ガチャ」を意識?
──現代の子どもの職業観には、どのような特徴があるのでしょうか? まずは、「稼げる仕事がしたい」という志向の高まりです。「お金持ちになりたい」と答える子どもの割合は、年々高まる傾向にあります(図参照)。先ほどご紹介したような不安を抱えている世代だからこそ、安心材料の1つである「収入」を重視しているのかもしれません。 また、社会の成長を目の当たりにしてきた保護者世代とは違い、子ども世代は「努力は報われる」という実感が持ちにくく、「ガチャ」といわれるような社会経済格差などを意識しているように感じます。努力して成功をつかむというストーリーを描きづらくなっているのではないでしょうか。 ──ほかに挙げられる特徴はありますか? 「社会のためになることをしたい」と考える子どもが増えています。震災やコロナ禍を当事者として経験したことで、利他的な価値観が高まっているといわれています。これは、日本だけでなく世界で見られる特徴です。 会社選びに関しても、保護者世代が知名度などを重視しがちだったのに対して「社会にとって良いことをしている会社に行きたい」という視点が高まっています。
保護者にできることは?「やりたいこと」を問うよりも大切なこと
──保護者のかたには、どんな意識が必要なのでしょうか? まず考えたいのは、「夢を持て」「やりたいことを見つけよう」というメッセージが、時には子どもの焦りを生む可能性があるということです。 現在の子どもたちは、親世代のころとは比較できないほど、たくさんの情報に囲まれています。そのなかで、大人の期待に応えようと真面目に考えている子どもたちが少なくありません。そこで「やりたいこと」を問うと、子どもをより追い詰めることになりかねません。 夢ややりたいことを最初から持っていたら素晴らしいですが、多くはさまざまな活動をするなかで見つかるものだと思います。自分は何に惹かれるのか、どんな時が楽しいのかを子どもがじっくりと考えられる時間をつくることが大切ではないでしょうか。 また、変化の激しい社会の中では、これまでのように将来から逆算して進路を考えるのにも限界があります。これからますます大切になっていくのは、変化に対応できる柔軟さです。だからこそ、さまざまな学習や経験を積み重ねて、選択肢を増やす「末広がり型」のサポートを考えてみるのがよいのではないでしょうか。 何か興味あることが見つかったり、できることが身に付いたりしたら、それに別の何かを掛け合わせてみる。その掛け算によって、人生の可能性が広がります。これからどうなるかはわからないけれども、今まで積み重ねてきたものは無駄にならないと思えるような自信を持てたら素敵ですね。 多様なことを経験し、知識や見識を深めること、学んだことを使ってみること。これらの経験から得られるわくわく感は、将来への期待を高めていきます。