ミラーサイクル？ アトキンソンサイクル？

　さて、冒頭で宿題になっていたアトキンソンサイクルの話だ。これまで述べたように、アトキンソンサイクルとは機械的に圧縮比より膨張比を長く採る仕組みを持つエンジンであり、バルブタイミングで膨張比を変えるのはミラーサイクルだ。エコウィルのエンジンを除けば、国内に本物のアトキンソンサイクルエンジンはない。最初はトヨタがミラーサイクルエンジンをアトキンソンサイクルだと言い張り、ホンダも同じ主張をしている。 　この仕組みを世界で初めて実用化して販売したのはマツダだ。トヨタとしては他社の後追いをしたと言われたくなかったのかもしれないが、トヨタのエンジンもホンダのエンジンもどう見てもミラーサイクルだ。話がややこしくなるので、そういうつまらない政治的なネーミングは止めて欲しい。原稿を書く側だって「お前本来のアトキンソンサイクルはなぁ」と指摘されたくはないので、どうしたってこの点に触れなくてはならない。読者にとっても分かりにくい。難しい技術をユーザーに理解してもらう妨げにしかならない。 せっかく夢のある技術なので、もっとすっきりとした形に変えてはもらえないものか。 （池田直渡・モータージャーナル）