「移民はペットを食べている」? 米大統領選討論会、両候補の発言ファクトチェック
米大統領選挙の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領は10日夜、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領との初のテレビ討論会で、移民による犯罪、インフレ、後期妊娠中絶について複数の虚偽発言を繰りかえした。一方、ハリス副大統領も、トランプ政権下での雇用喪失について誇張された主張を行ったとしてファクトチェック警告を受けた。 CNNのファクトチェック担当記者ダニエル・デールによると、討論会の中でトランプは少なくとも33回にわたり虚偽の主張を行い、そのうちいくつかは壇上でABCテレビの司会者によって誤りを正された。 ■ハイチ移民がペットを食べている? トランプ氏は、オハイオ州スプリングフィールドでは移民が「犬を食べている。猫を食べている。連中が食べているのは、そこに住んでいる人々のペットだ」と発言した。これは、共和党の副大統領候補J.D.ヴァンスと複数の右派議員や右派コメンテーターが広めた虚偽の主張だ。 スプリングフィールドの警察当局はこの主張をはっきりと否定しており、フォーブスの取材にも「移民によってペットが傷つけられたり、けがをしたり、虐待されたりしたという信憑性のある報告や具体的な訴えはない」と答えている。 トランプの発言を受け、司会者のデービッド・ミュアーがスプリングフィールド当局者の話を引き合いに出してただちに事実確認を行ったが、トランプは「テレビで」「私の犬が連れ去られ、食用にされた」と言っている人々の声を聞いたと改めて主張した。 トランプはまた、民主党が大統領選で不法移民に投票させようとしているという根拠のない主張を繰りかえした。この点について専門家は、保守系シンクタンクのヘリテージ財団を含むさまざまな情報源のデータを引用し、米国の選挙で外国人(外国籍者)が投票する事例は「非常にまれ」であり、不法移民が投票することは「さらにまれ」だと指摘している。 米国のインフレ率についても、トランプは「おそらく米国史上最悪だ。(中略)21%だった」と述べたが、これは事実と異なる。インフレ率は2022年半ばに9.1%と40年ぶりの高水準まで上昇したが、1980年代には14%、1974年には11.1%を記録している。 ■妊娠中絶問題 妊娠中絶の問題では、トランプは民主党を「急進派」として印象づけようと試み、ハリスの副大統領候補ティム・ウォルツが「妊娠9カ月での中絶はまったく問題ないと言っている」「出生後に殺してもOKだと言っている」などと虚偽の主張をした。即座に司会者のリンジー・デービスが「生まれた赤ちゃんを殺すことが合法な州は米国にはない」と訂正した。