メキシコのコンゴウインコを絶滅から救え! 毎年全体の1割100羽が悪質な密猟の犠牲に…
20年来の保護活動をレポート、2014年からは飼育された個体を再導入するプログラムを実施
コンゴウインコは中南米全域に分布しているが、メキシコに生息する亜種(Ara macao cyanoptera)は絶滅の危機に瀕している。現在、野生には1000羽ほどしか残っていない。鮮やかな体色をしたこのコンゴウインコは、かつてはメキシコ湾に沿って米国との国境からグアテマラまでの空を赤く染めていた。だが、過去数十年間で熱帯雨林が大きく縮小し、生息域の80%が失われた。さらに、違法な野生生物取引によって年間約100羽がメキシコの生息地から姿を消している。なかでも最も標的となっているのが、幼いひなたちだ。 ギャラリー:メキシコのコンゴウインコを絶滅から救え! 写真11点 生物学者のディエゴ・ノリエガ氏は2005年から、チアパス州ラカンドン熱帯雨林のモンテス・アスーレス生物圏保護区内とその周辺に生息するコンゴウインコの最大かつ最後の群れの保護・保全・回復プログラムを主導している。 プログラムを運営するメキシコシティの非営利団体「ナトゥライエ・エコシステマス・メヒカノス(NEM)」は、これまでに200羽のひなを保護し、飼育した後に野生へ戻してきた。
メキシコのアマゾン
コンゴウインコは知能が高く、カリスマ性のある鳥だ。鮮やかな色、エレガントな飛翔、騒がしい鳴き声が魅力で、長年ペットとしても親しまれてきた。だが、ここ数十年で違法な闇市場が拡大し、問題となっている。 2024年の国連世界野生生物犯罪報告書によると、世界的なネットワークが強大な犯罪組織グループを使い、4000種の動植物を標的にしているという。インコやオウムはとりわけ需要が高く、違法取引の最大2%を占めている。 メキシコではコンゴウインコの売買が禁止されているが、法律には執行力がなく、ひなを違法業者に売ることが一部の地元住人にとって手っ取り早い収入源になっている。違法業者は、こうして買い取ったひなを外国の顧客へ売り飛ばす。 現在メキシコには、コンゴウインコの群れが2つしか残っていない。しかも、オアハカ州チマラパス地方に生息する群れはわずか20羽前後と、あまりに数が少ないため、この先も生存できる可能性は低いとみられている。そこでNEMは、ラカンドン熱帯雨林内のラカントゥン川流域に残る最後の健全な集団に焦点を絞っている。 メキシコの生物多様性の20%以上が含まれるこの熱帯雨林は、マヤ系のラカンドン族の土地だ。彼らは、今や保護活動の重要なパートナーだ。NEMはラカンドン族と協力して、コンゴウインコ類を保護する必要性について、人々の意識を高める活動をしている。例えば、コンゴウインコ類は種子散布者として森のなかで重要な役割を果たす。 ほかにもNEMは、エコツーリズムプロジェクトを開発する研修も行っている。最終的には、密猟や、熱帯雨林を破壊して農地に転換するよりもエコツーリズムのほうが利益になると、NEMの理事でメキシコ国立自治大学理学部教授のフーリャ・カラビアス氏は指摘する。 「こうした研修は、この地の生態系の保護という、より広範囲なプログラムの一環です。生態系が守られなければ、インコも、ジャガーも、バクもいなくなり、森の生物多様性が失われるでしょう。ここは、メキシコのアマゾンです。私たちの仕事は、この場所を保護することです」