恩師を殺害した西鉄バスジャック犯の少年に、5年後「つらかったね」...本当にあった「再生」の物語
2000年に17歳が起こした西鉄バスジャック事件。乗客1人が死亡、4人が重軽傷を負った。バスに居合わせ、重症を負った女性はなぜ...
2000年5月3日に起きた西鉄バスジャック事件の記憶はいまだに鮮明だ。 神戸連続児童殺傷事件からわずか3年後の出来事であり、「ネオむぎ茶」というハンドルネームで「2ちゃんねる」に書き込みをしていた犯人が、神戸の事件の犯人(事件当時は14歳)と同学年である17歳の少年だったことも大きな話題となった。 【動画】台湾の地下鉄で、ナイフを手に「無差別」に襲い掛かる男 サービスエリアに停車中だったバスに機動隊が突入し、少年が逮捕されるまでの様子はテレビで生中継されたが、あのバスの中にいたのが『再生 西鉄バスジャック事件からの編み直しの物語』(山口由美子・著、岩波書店)の著者だ。 ~~~ 「少年」が立ち上がったのは、バスが佐賀駅前を出発して、高速道路に入って間もなくでした。大きな包丁を振りかざしてはいますが、「少年」は、華奢な身体つきです。包丁を振りかざすというよりは、包丁に振り回されているような男の子でした。そんな印象でしたから、実のところ私は、あまり本気にしていなかったのです。「後ろに行けというから、まあ、行っておくか」程度の、切迫感のない気持ちだったのを覚えています。 「お前は、俺の言うことを聞いてない! 後ろに下がってない!」 そう言って私の目の前で、一人の女性客の首を彼が刺すまで、「少年」が本気だと思っていませんでした。(2~3ページより) ~~~ 著者はこの日、自分の子どもたちが幼い頃に世話になり、「恩師」と呼べる関係だったという塚本達子さんという女性と、福岡まで朝比奈隆氏の率いる大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会に向かうところだった。 28年間にわたり小学校教諭を務めたのち、「幼児室」という施設を主宰されていた女性であり、この事件で唯一、命を落とされた被害者だ。 ちなみに塚本さんは最初、バスは時間がかかるから電車にしようと話していたのだという。しかしその後、「やっぱりバスにしよう。高速バスなら、バスを降りたらホールまで歩いて行けるから」とのことで経路を変更したのだそうだ。 その結果、「少年」と乗り合わせたことを考えると、「あのバスに乗る運命だったのかもしれない」と著者は振り返ってもいる。