恩師を殺害した西鉄バスジャック犯の少年に、5年後「つらかったね」...本当にあった「再生」の物語
「あなたの罪を赦したわけではない。赦すのはこれからです」
なお、事件をきっかけとして「居場所」をつくってから数年が過ぎ、事件から5年を経ようとするころ、著者は少年と面会することになる。 ~~~ あの、か細かった「少年」は、見違えるほど体格の良い青年に成長していました。私は驚きと共にその姿に見入ってしまいました。5年の歳月は、確実に流れていました。 「少年」は、「大変なことをして申し訳ありません」と言いながら深々と頭を垂れ、謝ってくれました。(中略) 私はそれを、心からの謝罪だ、と感じました。 教官が「少年」のそばにある椅子を勧めてくれたので、私はぎこちなく座り、思わず彼の背中に手をやり、さすっていました。さすりながら、「これまで誰にも理解されず、つらかったね......」と声をかけました。そして、「だけど、あなたの罪を赦したわけではない。赦すのはこれからです。これからの生き方を見ているから......」と伝えました。(171~172ページより) ~~~ それから間もなく、「少年」から手紙が届いたそうだ。 ~~~ 山口さんと出会い、申し訳ない思いを伝えた時、山口さんは泣かれました。私のことを思って泣いてくれました。私はそのとき、自分の罪深さと温かい思いが同時に湧き起こりました。(173ページより) ~~~ その言葉が嘘のないものだと思えたことで、著者は「私との面会は彼の心に響くものであったのだ」と実感できたという。 印南敦史(作家、書評家)