中国新興EV「理想汽車」、失速克服に確かな手応え 初のBEV失敗を糧に、7~9月期の業績が大幅改善
中国の新興EV(電気自動車)メーカーの理想汽車(リ・オート)は10月31日、2024年7~9月期の決算を発表した。 【写真】理想汽車のSUV「L6」のスマートコクピット 同四半期の売上高は前年同期比23.6%増の429億元(約9191億円)、本業のもうけを示す営業利益は同46.7%増の34億元(728億円)を計上。直前の4~6月期から目に見えて改善し、業績回復を印象づけた。 理想汽車は「造車新勢力」と呼ばれる中国の新興メーカー群を代表する1社で、2023年に初の通期黒字を達成した。だが、中国市場でEVの価格競争が激化する中、2024年に入って販売が一時失速していた。
■戦略を素早く軌道修正 その要因は、鳴り物入りで投入した初のBEV(訳注:バッテリーだけを動力に使うEV)の高級ミニバン「MEGA」の失敗と、それに伴う販売現場の混乱だ。理想汽車はBEVのラインナップ拡大は時期尚早と判断し、2024年に発売予定だった3車種のBEVの発売を延期。通期の販売目標を(80万台から50万台へ)大幅に下方修正した。 (訳注:理想汽車はMEGAを発売するまで、航続距離を延長するための発電専用エンジンを搭載する「レンジエクステンダー型EV」に特化した製品戦略をとっていた)
販売失速と戦略修正の影響は、同社の上半期の業績にくっきり表れた。2024年1~3月期の営業損益は5億8500万元(約125億円)の赤字に転落。4~6月期は黒字に復帰したものの、営業利益はわずか4億6800万元(約100億円)にとどまった。 しかし7~9月期の実績から見て、理想汽車は素早い軌道修正により困難を乗り切ったと言えそうだ。同四半期の販売台数は15万3000台と前年同期比45.4%増加、営業利益は4~6月期の7倍以上となった。
理想汽車は3車種のBEVの発売を延期したため、2024年内は新型車の投入がない。だが、同社は10~12月期の好調維持に自信を深めている。 10~12月期の販売台数について、理想汽車は16万~17万台という見通しを示した。これは前年同期比21~29%の増加に相当する。また、通期の販売台数は下方修正後の目標にほぼ合致する50万2000~51万2000台と予想している。 ■高級車カテゴリーで存在感 「中国の乗用車市場では、7~9月期の総販売台数に占めるEVとPHV(プラグインハイブリッド車)の比率が50%を超えた。今や消費者にとって(エンジン車よりも)主流の選択だ」