なぜシフィオンテクはドーピング処分が軽減されたのか。不正監視団体が詳細を報告<SMASH>
またシフィオンテク側は改めて意図的に同物質を摂取していないことを裏付けるべく、下記の主張を提示した。 ・メラトニンを服用する前に専門のスポーツ医師に相談し、医師が指示した製品のみを服用した。 ・医師はシフィオンテクがプロテニス選手であり、ドーピング検査の対象となることを知っていた。 ・シフィオンテクのトレーナーも医師が指示したメラトニン錠剤の成分を調査し、禁止物質が含まれていないことを確認していた。 ・メラトニン剤を信頼できる薬局から購入した。 ・製品は欧州連合の規制を受けている信用度の高い製薬会社によって製造されており、その製品に関連する汚染の事例はこれまで一度も発生していないこと。 ・時差ぼけに対処するために、規定の場合にのみ製品を服用したこと。 ・メラトニンがポーランドでは医薬品とみなされ、薬局で購入可能であること。 ・服用した薬剤は数年間使用してきたものと同じもので、これまで何の問題も発生していなかったこと。 ちなみに8月12日にシフィオンテクのサンプルを採取した際、同選手は検査フォームに過去7日間で服用した薬として計14種類のサプリメントと薬を記載したが、その中に問題のメラトニン剤は含まれていなかったという。 シフィオンテク側は申告漏れの理由を「服用した薬やサプリメントを記録したリストにその製品が記載されておらず、製品を摂取してからサンプルを提供するまでの間に数時間しか眠れず疲れていた」と説明。ITIAは記載漏れを不適切とみなしたものの、選手本人への2度にわたるインタビューと一連の状況を考慮した結果、シフィオンテク側の主張を受け入れたと報告している。 最終的にシフィオンテクは検査直後に出場しベスト4入りしたシンシナティ・オープンの獲得ポイントと賞金は全て没収されることが決定。一方で検査を受けて陰性だったパリ五輪や全米オープンの成績はそのまま有効となる。 また欠場したアジアシリーズ3大会と合わせ、出場停止処分は12月4日に全面解除の予定。ただし一連の決定に対してはまだWADA(世界反ドーピング機関)またはPOLADA(ポーランドの反ドーピング機関)が控訴する権利を有している。今後の動向に注目が集まる。 文●中村光佑