【中山美穂】が一人二役を演じた『Love Letter』からふと思い起こされる「伝説の名画の女性像」とは?
初めまして。アンヌ遙香です。このたび私が愛して止まない「映画」と、自分でもまだよく分からずにいる「女」をテーマに連載をさせていただきくことになりました。TBSアナウンサー時代から培われている、ほんのりマニアックな視点にどうぞお付き合いくださいませ。 【画像】アンヌ遙香さんプロフィール 【アンヌ遙香、「映画と女」を語る #1】
今は亡き中山美穂の代表作のひとつ『Love Letter』とは
中山美穂の『Love Letter』ほどあらすじを事前に調べることなく、いきなりの初見で物語の展開を楽しんでほしい作品はないかもしれません。 届くはずのない手紙に返事が届く、そしてなぜか中山美穂が同時代に生きる二人の女性を演じるこの映画に関して、私はストーリーを事前に知らされずに観ることができたことをつくづく幸せなことだと感じているのです。 「映画と女」という大テーマを設けているこちらの連載では、ある程度のあらすじを紹介しなくては話が進まないので、まだこの映画を観たことがないという方はあらかじめご覧いただくことを強くお勧めします。 岩井俊二監督初の長編であり、韓国や中国にも多くのファンがいる本作は私が生活する北海道が舞台の一部ということもあり、個人的にも非常に思い入れが強い作品です。 神戸に住む博子は、山岳遭難で命を落としてしまった婚約者・樹を、3回忌を終えた今でも忘れられずにいます。決して届かないと思いながらも思わず彼が中学生時代に暮らしたという小樽の住所宛に手紙を出してしまう。決して届かないはずの天国へのラブレターだったつもりなのに、なぜか返事が来てしまい......というストーリー。登場人物のすべてが優しくて美しくて、はかないのです。
一人二役という難しい役どころ
中山美穂さんは、樹を忘れられない婚約者・博子と、樹と同姓同名の中学時代の同級生である「もうひとりの樹」のニ役を演じ分けています。帰ってこないとわかってはいるのに、頑なまでに亡くなった婚約者を忘れようとしない博子と、小樽で家族とともにのびのびと毎日を送るもう一人の樹。この2人の女性は全く異なるパーソナリティーを有しています。 しかし中山美穂さんはこの2人をしっかり演じ分けているわけで、最初は「声の出し方だけの違いか?」なんて穿った見方をしてしまっていた私でしたが(だって髪型まで全く同じなんです!)、時間が経つにつれ、一目でどちらか博子か、樹か、見分けがつくようになるのがすごい。中山さんは佇まいそのものを演じ分けていたのでした。 私の好きなシーンに、博子と加賀まりこ演じる樹の母が対峙する場面があります。ここからは物語の核心に迫る部分なので、こうして具体的に記してしまうことを許してほしいのですが、亡くなった樹は、かつて博子に会った瞬間に交際を申し込んだ過去がありました。一目惚れだったといいますが、その一目惚れにはどうやら理由があったらしいということに、残酷ながら博子は気づいてしまいます。 樹の小樽時代の卒業アルバムに、自分とよく似た顔付きの少女の写真を見つける博子。思わず樹の母親(加賀まりこが本当に最高!ぱっと見おしゃれで厳しい、コワイ義理のお母さんに見えるのだけど、気の良い穏やかなお母さんをのびのびと演じています)にその写真を指差しながら「似てますか。この写真。」とおもむろに問いかけます。
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