アーティストたちの沈黙の対話から生まれたダイナミズム
芸術のダイナミズムは社会への貢献にも
そんな2人のコラボレーションはより一層発展しようとしている。ボスコがメキシコに設立した「カサワビ基金」(Fundación Casa Wabi)に共作の彫刻作品を設置し、さらに日本のアーティストを対象とするアワード「Izumi Kato Prize」を創設したのだ。 「地域や世界のアートシーンに貢献する責任を感じてカサワビ基金を設立しました。その中でもこのアワードは加藤との長年の友情の証といえるでしょう。受賞者は、安藤忠雄さんが設計したオアハカのレジデンスで制作し、地域の子どもたちとのワークショップなどさまざまな活動に参加してもらいます」とソディ。加藤はこう応える。 「2人で飲んで話しているうちに、ボスコの考え方に共感しました。社会に貢献することでアートのダイナミズムが生まれることを知ったんです。広大なサボテンの林に囲まれた海辺のレジデンスはまあまあワイルドな場所ですけど、これまで海外経験のない作家やほかのコンペで受からなそうなやつにも来てほしい。教育の機会が大切であることを僕も大人になってわかりました」 柔軟性のある有機的な基金をつくりたいというソディのヴィジョンと、質素であることに価値をおく「侘び寂び」の精神に共感したことが結びつき、この基金は生まれたという。加藤という相棒を得て、さらに次世代の育成プロジェクトは成長していくに違いない。自身を取り巻く環境と沈黙の対話を重ね、直感を信じて表現してきた彼らの活動に希望を持って刮目していきたい。 黙: Speaking in Silence Bosco Sodi & Izumi Kato 会期:~11月17日 (日) 会場:両足院 住:京都府京都市東山区大和大路通四条下る4丁目小松町591 開館時間13:00~17:00 (最終入場 16:30) 会期中無休 特別拝観料:大人¥1,000、高校生以下¥500 ※現金のみ https://ryosokuin.com
文・住吉智恵 編集・石田潤(GQ)