勉強熱心な雅子さまの結婚披露宴「宮中饗宴の儀」 外務省で学んだテーブルマナーが役立った日
オバマ&トランプ大統領にも食べた「富士山アイスクリーム」
そもそも、宮中で行われる午餐会や晩餐会は、いつから始まったのだろうか。 宮中晩餐会は、1873(明治6)年、イタリア皇帝の甥であるゼーン公が訪日された際に、明治天皇が初めてフランス料理でもてなされたのが始まりとされている。以後、宮中晩餐で供されるのは、正式な献立による料理を意味する「正餐」で、プロトコル(国際儀礼)にのっとったフランス料理のフルコースとなった。 洋食器は、当初は外国からの輸入品が使用されていたが、1879(明治12)年頃からは、国産の洋食器を使用するようになった。飾りつけは基本的にシンプルな白を基調とする。テーブルクロスは主に純白で、柄が入ったとしても天皇家の菊の御紋や皇族のお印が織り込まれたもの。プロトコル(国際儀礼)のもとでは、クロスの垂らす長さやテーブルに飾るフラワーアレンジメントの高さもすべて決められているという。 金菊御紋付パルメット文様の皿は、フランスの有名陶磁器メーカーであるセーブル製の食器を見本として作られた。また、御旗御紋入りのグラス類は、明治前期に製作されたイギリス製と伝わっている。 メニューは賓客の好みや宗教上の理由で出すことのできない食べ物があるかを充分に考慮したうえで決められ、御料牧場産を中心とした極上の食材が使われる。テーブルにはあらかじめパンがセットされていて、スープ、魚料理、肉料理、サラダ、アイスクリーム、デザート(果物)が順に出される。 宮中晩餐で出される富士山型のアイスクリームは、大正時代に考案されて現在まで伝わっているもの。実はかなり大きくて、一つで約9人分もあり、ナイフで切ってそれぞれのお皿に取り分ける。 さらに、形は日本の象徴である富士山だが、季節によって色や味が少しずつ変えられる。例えば、春は富士山の裾野を抹茶で緑にして花をあしらう、秋は裾野をイチゴで紅葉の赤のように色付けし、山頂をマロン味にするといった具合である。 2014(平成26)年4月に来日したオバマ大統領(当時)は抹茶アイスが好物で、宮中晩餐会の帰り際に天皇陛下(今の上皇陛下)と美智子さまに「特に抹茶アイスをありがとうございました」と、ユーモアたっぷりにお礼を述べたという。 2019(令和元)年、今の天皇陛下が即位後に陛下と雅子さまが初めて国賓として米国のトランプ大統領(当時)を招いて行われた宮中晩餐会でも、富士山型のアイスクリームが出されている。ときがたち、米国の次期大統領はトランプ氏と決まった。もし再びトランプ大統領が来日するなら、陛下と雅子さまはどのようなおもてなしをされるのだろうか。(連載「天皇家の食卓」第28回) 参考文献/『宮中季節のお料理』(宮内庁監修、扶桑社)、『殿下の料理番皇太子夫妻にお仕えして』(渡辺誠著、小学館文庫)、『皇室ファッション大全素敵な装いルールBOOK』(渡邉みどり監修、宝島社)、宮内庁公式ホームページ 文/高木香織 たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さまマナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへプリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さまあの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さまいのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る!家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。