貧困のため旅行に縁がなかった。恩人の結婚式に出るための、人生初旅行で待っていた一期一会
◆昔からタイムスリップしてきたよう お別れの時、お礼と共に朝買ったクロワッサンを渡した。オーナーさんは、「この前買いにいった時には売り切れていたので嬉しい」と喜んでくれ、「お気をつけて」と言うと、ものすごいスピードで車を走らせ、一瞬で見えなくなった。 料金比較をして、一番安いところ、という理由でそのゲストハウスにしたが、ビジネスホテルにしていれば、あの街を訪れることも、この出会いもなかっただろう。初めての旅行で、旅に出るからこそ待っている一期一会の素晴らしさを噛み締めた。 おかげで無事、温泉に入ることができた。日本最古という道後温泉の佇まいは、昔からタイムスリップしてきたよう。道後温泉の周辺の商店街の活気には、圧倒されっぱなしだった。 地元の観光地とは比べ物にならない広さと規模、活気!人力車が通り、あちこちから香ばしい香りがただよっている。情緒を味わえる古き良き街並み、いろとりどりのお土産、地元名物を味わえるグルメの数々。お土産を扱うお店に入ると、あまりの広さで、端から端まで見たら結構時間がかかる。格安航空だから、荷物は増やせない!と思いつつ、物珍しいものばかりで、ついつい手が伸びてしまう。たった数時間しか滞在していないのに、すっかりこの地に愛着が沸いて、思わず道後温泉と書かれたTシャツを買いそうになった。 私は西日本の生まれなので、やはりどこか街の空気が懐かしく感じられた。上手く言い表せないが、気候や方言、人々の雰囲気などが、東と西では違いがある。方々から聞こえてくる方言に、懐かしさを覚えた。 温泉にじっくり入ったおかげか、帰りの飛行機で友達が「なんか腰が痛くない!」と言う。言われてみれば、行きはフライト中「腰痛い」しか考えていなかったのに、帰りは全く痛くない……!
◆出会った人や土地の空気、においを思い出す 東京に帰った後もしばらくなんだか夢見心地。余韻がすごい。お土産を家族に送り、仕事関係の人に配った。ものはかさばるので、自分用のお土産は愛媛の街並みを描いた絵葉書を1枚。机のうえに飾り、見るたびに出会った人や土地の空気、においを思い出す。 旅って、自分には縁遠くて、わざわざ高い交通費や宿泊代を出してまで行くものなのか?と思っていた。でも今回で、一期一会や、その土地に行かないと見れない景色、味わえない風土や特産品、その全てが、他には代えがたい、人生の大切な思い出になると知った。 次はいつになるか分からないが、いつかまた、旅にでかけたいと思う。 先日、今回訪れた愛媛で大きな地震があった。被災された方々に心よりお見舞い申し上げると共に、1日も早く、平穏な生活が戻るように、祈っています。
ヒオカ