楕円銀河M87のジェット周辺では新星が多く発生 ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを分析
STScIによれば、1兆個もの星が集まっているM87では毎日どこかで1回は新星が発生しているといいますが、ジェットの周辺でより頻繁に新星が起こる理由はまだわかっていません。 ジェットと星の爆発現象の関連性は以前から研究されていて、新星がジェットの周辺に集中しているのは「ジェットがもたらす何らかの影響によって、恒星から流れ出るガスの量が増えているから」あるいは「ジェットが星形成活動を促進することで、新星を起こすような連星を含む星の密度がジェット周辺で高くなっているから」といった仮説が提唱されていました。しかし、分析を行ったLessingさんたちは、この2つの仮説ではM87におけるジェット周辺の新星の多さを説明できないと結論付けています。研究チームはその理由として、M87のジェットから放射される電磁波は恒星を加熱し膨張させてガスの流出を促進するには弱いこと、またM87の反対側のジェット周辺では新星の増加が確認されていないことなどを挙げています。 Lessingさんは「何が起こっているのかはわかりませんが、とてもエキサイティングな発見です」「これは、ブラックホールが噴出させるジェットと周囲の相互作用に関する私たちの理解に、何かが欠けていることを示しています」とコメントしています。M87のジェット周辺では一体何が起きているのか、今後の研究にも注目です。研究チームの成果をまとめた論文はThe Astrophysical Journalに掲載が承認されており、arXivでプレプリントが公開されています。 Source STScI - NASA's Hubble Finds that a Black Hole Beam Promotes Stellar Eruptions NASA - NASA's Hubble Finds that a Black Hole Beam Promotes Stellar Eruptions ESA/Hubble - Hubble finds that a black hole beam promotes stellar eruptions Lessing et al. - A 9-Month Hubble Space Telescope Near-UV Survey of M87. II. A Strongly Enhanced Nova Rate near the Jet of M87 (arXiv)
sorae編集部