楕円銀河M87のジェット周辺では新星が多く発生 ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを分析
アメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)は2024年9月26日付で、同研究所が運用する「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の観測データをもとに、楕円銀河「M87」で検出された新星(古典新星)は銀河の中心から噴出するジェットの周辺で多く発生していたことが明らかになったとする研究成果を紹介しています。 楕円銀河「M87」の中心に超大質量ブラックホール M87は「おとめ座(乙女座)」の方向約5500万光年先にある楕円銀河です。中心には質量が太陽約65億個分もある超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)があり、2019年4月に国際研究グループ「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope: EHT)」が電波で観測したブラックホール周辺の画像を公開したことで注目を集めました。オレンジ色に着色されたリング状の像を見たことがある人も多いのではないでしょうか。 そんなM87の中心からは、長さ数千光年のジェットが噴出していることが知られています。ブラックホールに落下するガスは真っ直ぐ進むのではなく、らせんを描きながらブラックホールに近付いていき、その過程で降着円盤と呼ばれる構造を形成します。こうしたガスの一部はブラックホールに落下せず、両極方向へ高速で放出されることでジェットを形成していると考えられています。
今回、スタンフォード大学のAlec Lessingさんを筆頭とする研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡を使用した2回の観測を通じてM87で発見された合計135個の新星の位置を調べました。その結果、新星はジェットの周辺でより多く発生していたことが明らかになりました。STScIによると、ジェットの周辺では銀河の他の場所と比べて新星が2倍見つかっていることから、ジェットの周辺には新星を起こす連星が他の場所と比べて2倍存在するか、あるいはジェットの周辺では他の場所よりも2倍の頻度で新星が起きていることが示唆されるといいます。 新星とは白色矮星と恒星の連星で起こる爆発現象のことで、恒星から流れ出て白色矮星の表面に降り積もったガスが暴走的な熱核反応に至ることで発生すると考えられています。爆発は白色矮星に再びガスが降り積もることで繰り返されることがあり、同じ連星で繰り返し観測された場合は再帰新星や回帰新星と呼ばれます。なお、ガスが降り積もり続けて白色矮星の質量が一定の値(太陽の約1.4倍)を超えると、超新星の一種である「Ia型超新星」が起こると考えられています。