甲状腺疾患があっても妊娠できる? 妊娠した時に気をつけることは?【医師解説】
甲状腺疾患の患者が妊娠した際に気をつけることは?
編集部:妊娠とも関係があるとのことでしたが、どのような影響があるのですか? 薗田先生:不妊と関係があると言われています。甲状腺ホルモンは女性ホルモンの分泌にも大きく関わっており、過剰になっても不足になっても月経不順や無排卵などを起こして、不妊につながってしまうのです。 編集部:そうなのですね。 薗田先生:そもそも日本人の場合、甲状腺機能に異常をもつ方の男女比率は1対5と、圧倒的に女性に多い傾向があります。 近年では、不妊の相談に来る方に、まず甲状腺の検査をする医療機関も増えているほど、隠れた甲状腺機能の障害で不妊に悩んでいる方が多くなっているのです。 編集部:甲状腺機能に障害のある人が妊娠した場合、気をつけることなどありますか? 薗田先生:まず、ヨウ素を制限する必要があります。ヨウ素は海藻類やうがい薬に多く含まれているため、海藻類の摂取やうがい薬の使用を控えるよう気をつけてもらいます。 ほかには、1ヵ月に1度、甲状腺ホルモンの状態を血液検査で確認することと、薬を飲んでいる人は飲み忘れが無いよう、普段以上に注意しましょう。特に、「器官形成期(※)」である4~7週に注意が必要なので、妊娠自体に早く気づくことも大切です。 ※器官形成期:赤ちゃんの中枢神経が形成され、目や心臓、手・足などの重要な器官が作られる時期。薬やホルモンなどの影響を最も敏感に受ける時期と言われている 編集部:最後に、Medical DOC読者へのメッセージをお願いします。 薗田先生:甲状腺疾患のある人の妊娠・出産については、気をつけなければいけないことがいくつかあります。言い換えれば、適切に対応さえすれば、過度に心配する必要はないのです。 より安心で快適な妊娠生活を送るには、甲状腺を専門としている医療機関に相談するのがよいでしょう。とくに妊娠中のフォローアップは、例えば血液検査の結果が当日にわかるといったスピーディーさも重要。 なぜなら、赤ちゃんの器官が形成されるのはわずか3~4週間なので、「検査の結果は来週以降に」といったやり取りをしていると対応が遅れてしまうリスクがあるからです。 甲状腺疾患は症状がわかりにくく、「不妊の原因を探っていたら甲状腺疾患だった」「精神科にかかっていたけれど良くならなかったが、実は甲状腺疾患だった」ということも少なくありません。 遺伝性のある甲状腺疾患も多いので、ご家族に甲状腺疾患のある人は、妊婦検診などで必ず申し出るようにしてください。