「うんちの呪い」が怖すぎる…!一度かかると治療に数年かかることも。「慢性機能性便秘症」とは?【専門医】
便秘症は病気。過剰な心配は不要だけれど、気になるときは早めに受診を
――ママ・パパが抱きがちな、便秘に関する疑問について教えてください。まず、親が便秘がちだと、子どもも便秘になりやすいですか。 萩原 子どもの便秘は、遺伝的な要因が関係している可能性があるといわれています。でも、要因はそれだけではありません。食物繊維が少ない食生活、不規則な生活、牛乳アレルギーなども便秘に影響することが知られています。 しかも、どのような体質だと便秘になりやすいかはわかっていないので、ママ・パパが便秘になりやすいとしても、そのことだけで子どもの便秘に神経質にならなくて大丈夫ですよ。 ――大腸が長いと便秘をしやすいと聞いたことがあります。真偽のほどはいかがでしょうか。 萩原 明確なエビデンスはないと思います。ちなみに、日本人成人(男女)の大腸の長さの平均は154.7cmという報告があり、長いと2mを超す人もいます。 子どもの場合は海外からの報告になりますが、0歳~2歳は約52cm、4歳~6歳は約73cm、9歳~11歳は約95cm。成長とともに大腸の長さが伸びていき、身長の伸びが止まるころに、腸の長さが伸びるのも止まると考えられます。 ――うんちをもらすようになったときも、便秘の可能性があるとか。 萩原 「便失禁」といいます。便秘が続くと、かたくなったうんちの上に、新しくできたやわらかいうんちがたまります。すると、かたいうんちのすき間からやわ らかいうんちがもれ出て、パンツを汚してしまうことがあります。 その様子を見た保護者は「下痢をしてトイレまで間に合わなかったんだ」と考えることが多いのですが、実際は便秘をしているのです。 ――子どもが1人でトイレに入るようになると、うんちの状態を確認しづらくなります。 萩原 小さいうちから、家庭内でうんちのことを話せる環境を作ることは大切だと思います。子どもが1人でトイレに行くようになったら、「どんなうんちが出たか教えてね」と、お願いしてみるのはどうでしょうか。 職業柄もあるとは思いますが、現在17歳、13歳、10歳の私の子どもたちは、今でも便秘など腸の調子が悪いときは教えてくれます。 ――「便秘くらいでは受診しにくい」と考えるママ・パパもいるようです。海外ではどうでしょうか。 萩原 欧米では、子どもの便秘は機能性消化管障害の1つと認知され、治療するのが当たり前になっています。日本でも小児科医は、便秘症は治療すべき重要な病気だと認識しているはずです。でも残念ながら、一般にはまだ「便秘は病気ではない」と思われていることが多いような気がします。実際、当センターを受診した保護者の中には、「便秘くらいで小児科を受診するのは気がひけて、長年相談できずにいた」という人もいます。 子どもの便秘が気になったらそのままにせず、ぜひ、かかりつけの小児科医に相談してください。 お話・監修・図版提供/萩原真一郎先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部 子どもに「うんちの呪い」がかからないようにするには、便秘かなと思ったら早めにケアをすることが大切。それでも「呪い」がかかってしまったら、主治医の指示どおり、根気よく治療を続けることが大切です。
萩原真一郎先生(はぎわらしんいちろう)
PROFILE 大阪母子医療センター消化器・内分泌科 副部長。2004年東京慈恵会医科大学卒業。2010年埼玉県立小児医療センター総合診療科、2016年UCSF research fellow、2018年大阪母子医療センター消化器・内分泌科医長を経て、 2020年より現職。専門領域は 小児消化器・肝臓・栄養、炎症性腸疾患、消化管内視鏡。3人の子の父親。 ●記事の内容は2024年10月の情報であり、現在と異なる場合があります。
たまひよ ONLINE編集部