「うんちの呪い」が怖すぎる…!一度かかると治療に数年かかることも。「慢性機能性便秘症」とは?【専門医】
伸びきった腸が元に戻るには時間がかかる。治療を中断すると再発することも
――小児慢性機能性便秘症の治療について教えてください。 萩原 まずは腸にたまったうんちを出しきって腸を空にすることが重要。グリセリン浣腸や下剤でうんちを出すことが治療のスタートになります。 その後は、うんちをやわらかくして出しやすくする薬を服用します。2歳以上の子どもであれは、私はモビコールという薬を処方することが多いです。これを1日1回もしくは2回服用すると、数日でうんちがやわらかくなります。ただ、かなり塩からい味がする薬のため、水に溶くと非常に飲みにくいのが難点。乳酸菌飲料やジュースなどに溶くと比較的飲みやすくなります。 うんちが出しやすいやわらかさになっても、長い期間便秘だった子どもの直腸は、便意を感じにくくなっていて、自力でうんちを出すことが難しくなっています。そのため浣腸を定期的に使い、強制的に排便を促すことも多いです。 ――小児慢性機能性便秘症の治療は長期にわたることが多いと聞きます。たまったうんちを出して、腸内を一度空にしただけでは治らないのですか。 萩原 長期間うんちがたまった状態だった直腸は、伸びきったゴムのようになっています。正常な子どもの直腸の口径は3㎝前後ですが、小児慢性機能性便秘症の子どもの場合は4㎝以上になることも。たまったうんちのせいで広がってしまうんです。そんな直腸が本来あるべき状態に戻るには、時間がかかります。 便秘が多少改善しても、自己判断で薬をやめたり量を減らしたりすると、拡張した直腸が本来の状態まで戻ることができず、便秘が再発してしまうことがあります。主治医の指示に従い、あせらずに治療を続けることが重要です。 ――萩原先生が小児慢性機能性便秘症の治療をしている子どもたちの中で、最も長い治療期間はどれくらいですか。 萩原 大阪母子医療センターで私が治療した中では、今のところ2年が最長です。この子は、浣腸を使わずに自力でうんちを出せるようになるまでに2年かかりました。でも、現在もうんちをやわらかくする薬は服用しているので、「何の助けもなしにうんちを出せる=うんちの呪いから解き放たれた」と言えるようになるには、まだ時間がかかりそうです。 ――「浣腸や下剤はクセになってしまうので使いたくない」と考えるママ・パパもいます。 萩原 浣腸や下剤もしくは緩下剤は、便秘治療の中心になるものです。受診した保護者には「浣腸や下剤がクセになることはなく、これらの薬を使わないことで、便秘がクセになります」とお伝えしています。みなさん納得してくださいます。