「うんちの呪い」が怖すぎる…!一度かかると治療に数年かかることも。「慢性機能性便秘症」とは?【専門医】
大阪母子医療センター消化器・内分泌科副部長の萩原真一郎先生は、便秘が慢性化してこじれるメカニズムを「うんちの呪い」と名づけました。「うんちの呪い」がかかった子どもの多くが、移行してしまうという「小児慢性機能性便秘症」。その治療方法などについて聞きました。 全2回のインタビューの後編です。 【画像】背は伸びてる?体重は大丈夫?赤ちゃんの成長がすぐわかる表
うんちがたまる→かたくなる→痛くて出すのをがまんする・・・これが「うんちの呪い」
――「うんちの呪い」という名称は萩原先生が考えたものですか? 萩原先生(以下敬称略) 2024年日本小児科学会のシンポジウムで、「うんちの呪い」を初めて使いました。といっても、実は私の上司が時々「呪い」という言葉を使っていたんです。「こんなことが起きるなんてまるで〇〇の呪いだ!」っていう感じで。 便秘が重症になると、あたかも「呪い」がかかったかのように、排便そのものがトラウマになり、本人、ママ・パパの日常生活に大きく影響を及ぼすことがあります。便秘をほうっておくと怖いことになる、その「呪い」を便秘治療で断ち切ることが大事ということを、ママ・パパに知ってもらうにはぴったりの言葉だなと思い、採用させてもらいました。 ――子どもに「うんちの呪い」がかかるメカニズムを教えてください。 萩原 直腸の中に長い間うんちがたまっている(=便秘になる)と、うんちの水分が直腸に吸収され、うんちがかたくなります。すると、うんちを出すときに痛みを感じるようになるので、子どもはうんちを出すのをがまんしてしまいます。そして、しばらくがまんしていると、便意がなくなります。 でも、うんちは直腸内に残ったままですから、いすわったうんちはますますかたくなり、その重みで直腸が広がっていきます。 かたい便がたくさんたまることで、次に便意が起こり、うんちを出そうとしたとき、さらに強い痛みを感じ、またもや出すのをがまんする…という悪循環に陥ってしまうんです。しかも、常にうんちがたまっていると、直腸が「うんちがたまった」と感じられなくなり、便意が起こらなくなってしまいます。 この一連のサイクルが、私が名づけた「うんちの呪い」です。 ――「うんちの呪い」がかかりやすい年齢はありますか。 萩原 離乳食開始以降は、どの年齢でも可能性があります。でもとくに、トイレトレーニングの最中で、トイレでうんちをすることに抵抗感や恐怖心を抱いている子どもは、「うんちの呪い」がかかりやすいと言えます。 ――トイレトレーニング中に、子どもはどんなことを「怖い」と感じるのでしょうか。 萩原 さまざまな原因が考えられますが、トイレでうんちを出せずに怒られた。何らかの理由で一時的に便がかたくなり、排便時に痛い思いをした。この2つが大きな原因になるようです。「うんちをするとしかられる」「うんちをするのは痛い」と感じることで、うんちをすることに恐怖心を抱くようになります。 「呪い」と聞くと、ちょっとコミカルな印象を受けるかもしれませんが、「うんちの呪い」にかかった子どもの多くは、「小児慢性機能性便秘症」という病気に移行しています。 これは、週2回以下しか排便がない日が1カ月以上続く病気。薬によって治療をしないと治りません。