土木が原風景となる時(7)堅牢瀟洒な駅舎デザインが魅力「九州新幹線」
世界が競う高速鉄道の先駆けとなった我が国の新幹線は、既に半世紀の歴史を有し、高速走行の営業運転を定着させている。この新幹線網の発展は、また鉄道土木技術の歴史でもあり、今や、“世界のShinkansen”として結実し、多くの国々のインフラ建設に寄与しようとしている。明治150年の歴史を経て、かつて学んだ本家欧米を凌ぐ新たな“高速鉄道のレガシー”を築きつつある。
2011年(平成23年)に全線開通した九州新幹線(鹿児島ルート)は、堅牢にして瀟洒な駅舎のデザインが象徴的である。いずれもコンセプトメイキングがなされ、当然のことのようにユニバーサルデザインを具備し、当地に華々しくデビューした。ここでは、新鳥栖駅(佐賀県鳥栖市)と鹿児島中央駅(鹿児島県鹿児島市)の晴れ姿をお見せしたい。新鳥栖駅は鹿児島ルートと今後整備が進む西九州ルートの分岐点となり、鹿児島中央駅は博多駅と相対するターミナル駅となる。
新鳥栖駅(写真1、写真2)の計画・設計に際しては、基本コンセプト「はばたく~新しい時代、新しい交流ゲート~」が提示されていた。駅舎正面のデザインは、鳥の翼をイメージしており、曲線と3本のラインを使って躍動感とスピード感を表現。色彩として、佐賀県の県鳥「カチガラス(カササギの別名)」と同じ白と黒のモノトーンを採用し、駅周辺の自然と調和を意図している。
一方、鹿児島中央駅(写真3)の特徴は、横連窓を設置して、ホームから外が見える、外から新幹線が見える基本デザインとなっていることだ。ホームからは桜島と市街を眺望し、駅周辺に行けば、花形新幹線の行き来が分かる。また、当地の有り余る程の陽光が、南国鹿児島の明るさと開放感を助長するものである。
これまで「土木が高架橋を設計し、その上に建築が上屋を架ける」構造であった新幹線駅舎は、既に2000年代より、“建築と土木の混成”としての新たな発想がなされ、駅レイアウトや建設コストなどの観点から多くのメリットがあることも聞いている(「建設の施工企画」2009年2月号)。両者の新たな混成はハイブリッド構造として具現化し、例えば、九州新幹線では新玉名駅にて採用されている(今回の主題からそれてしまうが、“駅舎”なる呼び方は、もはや世界のShinkansenからギャップを感じることもしばしば。何か象徴的な言葉が欲しいところである)。