土木が原風景となる時(7)堅牢瀟洒な駅舎デザインが魅力「九州新幹線」
さて、主役たる新幹線車両であるが、愛称を覚える間もなく次々にニューフェイスが登場し、子供たちは歓喜し、鉄道マニアはシャッターを切る。一方では、どんな時代にあっても、快適安全な高速鉄道の運行を支えるのは高架橋と駅舎であることも忘れてはならない。長きにわたる供用を託され、社会インフラ(infrastructure)としてのミッションを粛々と遂行していることも付記したい。
当地に華々しく舞い降りた駅舎は、10年20年と時を刻むにつれて、“生まれたときからある風景”となる。当たり前のように鎮座し、当たり前のように機能することこそが、社会インフラの本務であり、土木の本懐でもある。 (画像・資料:エスエス・安井建築設計事務所)
■施設データ・九州新幹線 新鳥栖駅 ・所在地:佐賀県鳥栖市 ・構造:RC造一部S造、ホーム形式は島式2面4線 ・建築主:(独)鉄道・運輸機構 ・設計:(独)鉄道・運輸機構 九州新幹線建設局、安井建築設計事務所 ・受賞:第11回ブルネル賞 大賞/最優秀賞(駅舎部門)、第56回鉄道建築協会賞 停車場建築賞 ■施設データ・九州新幹線 鹿児島中央駅 ・所在地:鹿児島県鹿児島市 ・構造:高架下建物RC造/S造、ホーム形式は島式2面4線 ・建築主:(独)鉄道・運輸機構 ・設計:JR九州施設部設備課、ドーンデザイン研究所、安井建築設計事務所 著者プロフィール 吉川弘道(よしかわひろみち)1975年早稲田大学理工学部卒。工学博士(東京大学)、技術士(建設部門)。米コロラド大学客員教授、東京都市大学教授を経て、現在、東京都市大学名誉教授。専門は、耐震設計、地震リスク。土木学会論文賞など多くの受賞歴がある。現在、インフラツーリズム推進会議議長を務めるほか、投稿サイト「土木ウォッチング」やFacebookページ「Discover Doboku」を主宰。著書は「鉄筋コンクリート構造物の耐震設計と地震リスク解析」(丸善)など7冊を上梓。