センバツ高校野球 東海大菅生、先制点死守 8強入り エース日当完封 /東京
第95回記念選抜高校野球大会第9日の28日、東海大菅生は3回戦で沖縄尚学(沖縄)と対戦し、中盤に挙げた1点を守り切って2年ぶりのベスト8進出を決めた。エースの日当(ひなた)直喜(3年)が再三得点圏に走者を背負いながらも粘り強く投げ、相手の強力打線を完封した。チームは大会第10日第3試合(29日午後1時半開始予定)で、初のセンバツ4強を懸けて前回大会覇者の大阪桐蔭(大阪)と対戦する。【加藤昌平、近森歌音】 この試合で最大のピンチとなった五回、無死満塁の場面。マウンドの日当は「(投げるのは)自分しかいない」と強い気持ちで相手に立ち向かった。スタンドから「日当がんばれ」という大声援が飛ぶ中、変化球を低めに投じて三振と内野ゴロ併殺で無失点に。グラブをたたき、ほっとした表情を見せた。 相手は昨秋のチーム打率が4割を超える九州大会王者。日当は変化球を制球良く投げ込む好調な立ち上がりで、昨夏の都大会に出場した野球部OBの小山凌暉(りょうき)さん(18)は「投球の調子が良い。甲子園を楽しんで後悔がないようプレーして」と見守った。 日当の好投に応えるように、打線も積極的な攻めを見せた。四回、沖縄出身で沖縄尚学を「特別な相手」と意識する2番・大舛凌央(りお)(3年)が左前打で出塁すると、迷わず盗塁を決めて進塁。その後、1死一、三塁から5番・新井瑛喜(同)が犠飛を放ち、貴重な先制点をもぎ取った。新井の母純子さん(54)は「硬さはあるけど、チームのために頑張っている」と胸をなで下ろした。 中盤以降も日当の勢いは衰えず、相手に進塁を許しても粘り強い投球で本塁を踏ませなかった。九回、チームカラーの青いメガホンが揺れる中、最後の打者から三振を奪うと、「ウオー」という歓声でアルプスが揺れた。 大舛の父範真(のりまさ)さん(48)は「親には甘えん坊な息子が、寮生活では一切連絡せず野球を頑張っていた」と成長を喜んだ。峰岸英仁校長は「緊張の連続だったがよく守り切った。次戦も自分に打ち勝って戦ってほしい」と選手たちをたたえた。 次戦の大阪桐蔭は2年前の夏、雨天コールドで無念の敗退をした相手。初の4強入りを懸けて、強敵にぶつかる。 ◇憧れのまなざしで ○…東海大菅生の系列である菅生学園初等学校の児童たちもスタンドに駆けつけ、メガホンを振りながら応援した。地元の野球チームに所属しているという小学4年の柴田姫花さん(10)は「野球部のお兄さんたちと一緒に応援できて楽しい」と笑顔を見せた。兄の影響で小学2年から野球を始め、現在は投手や一塁手などを務めている。ナインたちのプレーを見て「外野の難しいフライも捕れてすごい」と憧れのまなざしを向け、「勝てるように応援したい」とエールを送った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇「走攻守」頼れる中軸打者 東海大菅生・酒井駿輔左翼手(3年) 巧打の3番打者だが、最大の見せ場は1点リードで迎えた七回表の守備だった。2死二塁で自分の前に転がった左前打を猛然とダッシュしてつかむと、「アウトにするしかない」とバックホーム。捕手の北島蒼大(そうた)(3年)が送球をつかんで本塁に突っ込む走者はタッチアウトになり、ビッグプレーでチームを救った。 「野球一筋」と語るチームの熱血漢。この冬は長打力を身につけるためにチーム内で誰よりも多く米を食べ、体重を9キロ増やしてパワーをつけた。中学時代にバッティングを教わった地元・愛知のクラブチームの監督にテレビ電話で助言を受けるなどし、貪欲に打撃を磨いている。 こうした努力が実を結び、今大会では城東(徳島)との2回戦で決勝打を含む長打2本を放つ活躍。この日は1安打1盗塁と「走攻守」で存在感を示してチームの勝利に大きく貢献した。頼れる中軸打者は「次も一戦必勝で頑張りたい」と闘志を燃やしている。【加藤昌平】 〔多摩版〕