デジタル広告 の未来を探る:「いまのデジタル広告市場のエコシステムには、ねじれが起きている」The Trade Desk 日本担当ゼネラルマネージャー 馬嶋 慶氏
──広告主の広告購入を代行するものとして、アドフラウドやMFAをどう感じていますか?
DSPのほとんどが、在庫の買い方などについて業界が提案するレベル、たとえばJICDAQが推奨するレベルの品質管理は行っていると思う。我々は、それに加えてマーケットプレイスクオリティチームを設置し、最終的に目視レベルでの確認も行っている。 また、前述したようにPMPのように特定の信頼できるパブリッシャーに流すシステムを使うことでアドフラウドを完全に払拭するのは難しいが、ある程度は避けることはできる。
──デマンドサイド、サプライサイドともにプレイヤーが多すぎるため透明性が損なわれているのではないか、必要以上に複雑化してしまっているのではないか、という声も散見されますが、DSPとしてどのようにお考えですか。
信頼のできるパートナーが増えていく分には、健全なエコシステムの醸成という点でよいと思う。健全なエコシステムというのは、広告主が買い付けをしている広告枠がどこからどこを経由して買い付けできているのか、つまり、もっともシンプルで効果的な買い付け方法を実現する必要がある。 健全なエコシステムを目指せているのであれば、いろんなプレーヤーがいてよいはずだ。また、それがオープンインターネットの価値でもある。技術やコストを競い合ったり、いろいろな工夫がされたりすることで、ブランド側にもいろいろな選択肢を提供できる。 私が考える問題は、いろいろなパブリッシャーが1社の固定サービスに絞ってしまう可能性だ。寡占化のような状態になると、情報をコントロールするような状況も出てくる。自社の利益を増やすため、見せなくてよい情報は見せないといった構造にもなるだろう。そうなれば、ブランドやエージェンシーにも好ましい状況にはならない。
──透明性という点において、欧米の企業と日本企業では、どのように意識が違うのでしょうか?
経験則から話すと、欧米ではマーケティングにおける説明責任が常に求められる。日本企業でも厳しく行っているところはもちろんあると思うが、肌感では、ビジョンや目的、なぜそういう結果になったのかが常に見直されるという点において、日本企業は曖昧な印象もある。 透明性に対する重きの置き方も、日本と欧米では大きく違うだろう。欧米ではマーケティングが経営に直結しているからこそ、マーケティング投資に対してより結果を求め、企業のブランド価値がどういうふうに作られているのかという点で、常に透明性(説明責任)を求めている。
──DSPサイドがこの課題を解決する手立てはありますか? また、解決のために業界全体でどのように取り組むべきでしょうか。
よりプレミアムなコンテンツ、情報の裏付けがあるパブリッシャーを引き続きサポートしていくことに尽きるだろう。そのなかで、ウォールドガーデンだけでは見えてこないマーケティングのあるべき形をブランドやエージェシーと一緒に考えられればよいと思う。 TTDの全社的な取り組みでいうと、ブランドの担当チームを作って、オープンインターネットの重要性や透明性の重要性を説いている。より中立的なパートナーを使って、ベリフィケーションなマーケットを作っていくのが最善だ。なぜなら、それが本来あるべき社会なのだと感じるからだ。 Written by 島田涼平
島田涼平