米保健当局がSNSに「警告ラベル」の表示を呼びかけ 欧州では一部機能が停止 変化が求められるSNSの現状とは?
さまざまな調査でも「SNSの悪影響」が示されている
米国の公衆衛生局のレポートでは、8~12歳の約40%、13~17歳の約95%がSNSを利用しているという。米国の12~15歳の青少年(n=6,595))を対象にした研究では、1日3時間以上をSNSに費やすと、うつ病や不安の症状を含むメンタル ヘルスの悪化を経験するリスクが2倍になることも示された。 大学生の若者を対象とした小規模なランダム化比較試験(※)では、3週間にわたってSNSの使用を1日30分に制限すると、うつ病の重症度が大幅に改善した。特に、うつ病のベースラインレベルが高い人に効果があり、うつ病スコアが35%以上改善した。 また、若者と成人を対象とした別の小規模なランダム化比較試験では、4週間にわたってSNSの使用をやめると、自己申告による幸福感、生活満足度、うつ病、不安が、自助療法、グループトレーニング、個人療法などの心理的サポートの効果と比較して、約25~40%改善したという。
米疾病対策センター(CDC)の調査でもSNSの悪影響に関する調査結果が出ている。10代の若者の約4人に1人が2021年に自殺を真剣に考えたことがあり、この割合は10年前のほぼ2倍にあたる。アメリカ心理学会(APA)などの専門家団体は、こうした現状はSNSが一因だとしている。 SNSが青少年のメンタルヘルスに及ぼす悪影響が明らかになりつつある一方で、一部の層にとってはSNS上のコミュニケーションが有益な影響をもたらしているという研究結果も見られた。 米国の公衆衛生局長官は、SNSの運営企業に対し、健康への影響に関するすべてのデータを科学者や一般の人々と共有することを義務付け、独立した安全性監査を許可するよう勧告している。しかし、現時点で企業はこれを行っていない。
欧米を中心に規制強化。「TikTok Lite」は欧州で一時ストップ
欧米を中心にSNSに関する規制は、ますます強まっている。 2024年3月、米下院は米国でTikTokを禁止する可能性のある法案を可決。この法案は、約1億7,000万人の米国人が利用するTikTokがバイトダンスから分離され、米国企業に売却されない限り、米国のアプリストアでTikTokの販売ができなくなるという内容だ。 同法案を支持する議員らは、「中国政府が米国のTikTokユーザーに関するデータを提出するようバイトダンスに強制する可能性があり、TikTokは国家安全保障上の脅威となる」と主張している。