「今後の金利上昇を見越して〈変動金利〉より〈固定金利〉を選ぶべき」→住宅ローンの専門家が「全くのナンセンス」と一蹴する“納得のワケ”
マイホームの購入を検討している人にとって、住宅ローンをどう利用するか、なかでも「変動金利」と「固定金利」の選び方について、頭を悩ませる人は少なくありません。現状では約6割の人が「変動金利」を選択しているといいますが、「まずは変動金利と固定金利の本質的な違いを理解することが大切」と、住宅ローン・不動産分野で活躍するブロガーであり、公認会計士の千日太郎氏はいいます。千日氏の著書『住宅破産』(エムディエヌコーポレーション)より、詳しく見ていきましょう。 【早見表】3,000万円30年返済の住宅ローン…金利差による利息分 2023.01.06
「変動金利」と「固定金利」の本質的な違いは?
住宅ローンの金利タイプは大きく分けて変動金利と固定金利に分類されます。住宅金融支援機構の調査によると約6割の人が変動金利を選んでいるのですが、変動金利のリスクを十分に理解できていないと感じている人が半分くらいいるそうです。 一般的な定義として、変動金利は定期的に債権者が金利を見直すことで適用金利が変動する金利タイプであり、固定金利は借入時の金利が全期間にわたり変わらない金利タイプとされています。 そして変動金利と固定金利の本質的な違いは、わたしたち債務者と債権者である金融機関のどちらが金利変動リスクを負うかです。 変動金利は短期プライムレート(民間の金融機関が資金を融通しあう金利)に連動して債権者が金利を上下させることができる金利タイプです。金融機関が変動金利で儲ける仕組みは、短期プライムレートよりも少し高く住宅ローンの金利を設定して、利ザヤを得る(儲ける)というものです。金融機関は金利変動リスクを負わず、利ザヤを確定させることができます。 ・金融機関がお金を借りる時の金利が低い時は住宅ローンの金利は低くする ・金融機関がお金を借りる時の金利が高い時は住宅ローンの金利は高くする これに対して、固定金利は短期プライムレートが何%になろうが、最後まで金利を変えない金利タイプです。金融機関が貸す金利は一定ですから、場合によっては金融機関が逆ザヤになる(損する)可能性もあります。 ・変動金利=金利変動リスクを自分が負う ・固定金利=金利変動リスクを銀行が負う このように覚えておきましょう。金利変動リスクは契約当事者間で折半することはできません。必ず債権者か債務者かのどちらかがメインで負うことになります。 例えば民間金融機関が取り扱う住宅ローンの商品には当初固定金利(5年固定や10年固定金利)という金利タイプがあります。名称としては「固定」ですが、「金利変動リスクをどちらが負うのか?」という分類基準では次のような解釈になります。 ・予測できる前半期間は現在の金利水準で金融機関が利ザヤを取れるような金利で固定する ・予測できない後半期間はその時になってから金融機関が利ザヤを取れるような金利を決める 金利変動リスクをどちらが負うかは明白ですよね。金融機関ではなくわたしたち債務者の方です。つまり「金利変動リスクをどちらが負うか?」という分類基準において当初固定金利は「変動金利」に分類されるのです。 固定の期間にある程度リスクをヘッジできますが、固定期間が終わった時点のリスクに対しては、債務者が自ら準備しておく必要があります。ですから、厳密に「金利変動リスクをどちらが負うか?」という意味で「固定金利」と言えるのは全期間固定金利だけなのです。