「年収103万円」の壁は一部でしかない!「106万円の壁」が浮き彫りにする現行年金制度などの歪み
■ 収入が1万円増えただけで保険料負担は16万円増! 小黒:よく知られているように、扶養されている配偶者の給与収入が130万円を超えると、扶養している人の社会保険上の扶養から外れます。そうなると、被扶養者が自分で社会保険に加入する義務が発生するため、収入によっては負担が大きく増します。 ただ、2016年以降、パートなど短期労働者に対する社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大が行われた結果、(1)従業員50人超の企業で、(2)週20時間以上、(3)月額賃金8.8万円以上働く人(学生を除く)には社会保険が適用されることになりました。 本年11月中旬、厚生労働省は(1)・(3)を撤廃することを明らかにしましたが、最低賃金との関係で、週20時間以上という(2)の要件が残りました。この要件が残る限り、月額賃金が概ね8.8万円以上が基本的に厚生年金の適用対象となることには変わりがありません。 月額賃金8.8万円は年収にすると105万6000円(約106万円)です。つまり、年収が130万円に達していなくても、106万円で厚生年金保険料などの負担が増えて手取りが減るということです。ここに、本当の「年収の壁」が存在しています。 年収105万円未満で扶養されていた人の給与所得が106万円になると、仮に40歳で介護保険料も納めるとすると、健康保険料と厚生年金保険料とあわせた負担総額は年間で約16万円。収入が1万円増えただけで社会保険料の負担は16万円増えることになり、大きな負担増になります(ただし、収入が大幅に増えれば、相対的に負担の比率は下がります)。 ──国民民主党は所得税が課される最低金額を103万円から178万円に引き上げることを主張していますが、106万円や130万円でいったん手取りが減る「壁」があることに変わりはないということですね。こうした「壁」を解消して、収入を増やしても負担が減らないようにする方策はありますか?