掛け持ち社外取締役は株価にマイナス、形式主義に投資家が厳しい視線
ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ株式ファンドマネージャーは、以前は社外取締役との面会を要請しても実現しなかったが、「この1-2年で急激に増えた」と明かす。半面、「複数社のポジションを掛け持ちしたり、過去の縁故で社外取締役に就任したとみられるような人は、まだ投資家と会おうとしないことが多い」とも話した。
1社のチェックに割く時間が限られる兼任社外取締役が多い企業は、投資家からガバナンス強化への本気度が疑われるほか、形式主義に陥っているとの批判を受けやすい。また、投資家自身も株主総会を経て選任した事実があり、ジェンダー比率や取締役会の出席率など画一的な議決権行使基準が問題視されている面もある。
数字より実質
市場も兼任取締役の存在を全て否定しているわけではなく、コモンズ投信の伊井哲朗社長は執行を伴う役職にいる取締役であれば、2社程度の掛け持ちまでは許容できると指摘。それ以上は負担が大きいとの考えを対話を通じて投資先企業に伝えていると言う。
これまで以上に日本企業が国内外投資家から評価されるために重要なのは、コーポレートガバナンス・コードに沿った取締役会の構成比率など数字面ではなく、兼任であっても効率的な経営にどれだけ貢献しているかという実質面だ。
レオス・キャピタルワークスの福江優也トレーダーは、社外取締役の実務指針などが出たことで企業が対応して変化しているのは事実だが、「コーポレートガバナンス改革はまだ道半ば。全体に行き渡るまでには時間がかかる」とみている。
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Hideyuki Sano