世界は「静かなる有事」から「騒乱の有事へ」<永田町「視界ゼロ」>石破首相は細心・大胆、熟議で乗り切れるか
視界ゼロ――。2025年、国内政局、国際政治いずれにおいても、この表現がぴったりだろう。 少数与党として不安定な政権基盤をかこつ石破茂内閣を、東京都議選、参院選という関門が待ち構える。スキャンダルの中、同じ年に東京都議選、参院選が行われた過去、自民党は手ひどい経験をしている。政治環境が酷似する今、混乱を予感させる。 混とんとした世界では、トランプ大統領の登場で、その力関係が変わり、新政権が内政志向を強めれば、日米関係にほころびをもたらす。 対中など重要な政策課題で、日本がいわば梯子をはずされ、進路を見失う場面があるかもしれない。まさに内憂外患の年明けだ。
新年度予算案難航すれば窮地に
石破新内閣の登場、直後の総選挙での与党敗北、臨時国会での補正予算、政治改革法成立まで、24年秋以降の目まぐるしい政局の動きは、十分すぎるほど報じられている。ここで繰り返す必要はあるまい。 25年、石破内閣にとって最初のハードルは、新年度当初予算の成立だ。 従来のように自民党が衆参で過半数を維持、政局が安定していた時代なら、多少の審議遅れがあっても3月中に成立するケースが常態化していた。 いまはそう簡単にはいかない。少数政権であるため、野党の賛成が不可欠だ。 〝部分連合〟の相手として自民、公明の与党が想定していた国民民主党とは、24年暮れ「103万円の壁」をめぐって、交渉が不調に終わっている。与党は123万円まで引き上げたが、国民民主が主張する178万円との乖離はなお大きい。予算案審議で国民の合意を得られなければ、暗礁に乗り上げる。 予算審議が難航した過去をみると、時の首相が〝クビ〟を差し出さざるをえなかったケースもあった。
竹下登内閣当時の1989年春、戦後最大の疑獄事件のひとつに数えられたリクルート事件で政局は大荒れ。首相自身の疑惑に加え、野党が要求する証人喚問問題などをめぐって国会はしばしば空転、竹下首相の支持率も10%程度まで低迷した。新年度に入っても予算成立のめどが立たなかった。 暫定予算の補正などといった前代未聞の事態も生じたが、竹下首相が退陣を表明して事態を打開、ようやく成立にこぎつけた。 〝総主流派体制〟といわれる安定した政局運営で、長年の懸案、牛肉・オレンジの自由化という大技をみせた強力内閣ですら、あっけなく瓦解してしまった。