世界は「静かなる有事」から「騒乱の有事へ」<永田町「視界ゼロ」>石破首相は細心・大胆、熟議で乗り切れるか
〝石破後継〟として、昨年の総裁選で4位につけ即戦力が期待できる林芳正官房長官、実務能力の高い加藤勝信財務相、さらには岸田文雄前首相の再登板説など石破氏にとっては不快なささやきもきこえてくる。
トランプ新政権は厳しい対日姿勢の可能性
石破内閣の命運にかわらず世界は動く。日本も余波を受ける。 最大の焦点はいうまでもなく、トランプ新政権の動向だ。「アメリカ・ファースト」を標榜する新政権がウクライナはじめ世界的規模の問題で関与を薄めていく可能性が少なくない。 中国問題が最重要の日本は従来、バイデン政権と連携し、台湾や東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋島しょ国との連携を強化、中国への橋頭保構築を進めてきた。自民党の萩生田光一政調会長(当時)を23年秋に台湾へ派遣、林外相(同)も同年春にクック諸島など各国を訪問、24年夏に島しょ国サミットを東京で開いたのも、その具体化だった。 トランプ次期大統領は以前から、日本の防衛力の一層の強化を要求、次期国防長官に、「日本の防衛費は国内総生産(GDP)3%」を主張するエルブリッジ・コルビー氏を指名した。先方がアジアを含む世界の問題から手を引き、安全保障、貿易を問題で法外、強硬な対日要求をつきつけてきた場合、どうする。はしごを外された格好の日本は応える手立てを持ち合わせているのか。 筆者はどうやら、石破首相へ厳しいことばかりを書き連ねてきたようだ。総理大臣に上り詰めた首相の政治手腕を疑うものはいまい。 戦力の不保持をうたった憲法9条2項削除、自衛隊を国防軍とすること、米軍に特権的地位を付与している日米地位協定の改定など、石破氏従来の主張に賛同する国民は少なくない。何よりも、昨秋の総裁選での大逆転勝利など、2枚腰は、ロッキード事件解明に心血を注いだ故三木武夫首相を彷彿とさせる。 首相はしばしば「熟議」という言葉を用いるが、愚直に政策課題をこなし、天の時、地の利、人の和が整えば、十分有権者の信頼回復につなげることができるだろう。 世界は「静かなる有事」ではなくもはや、「騒乱の有事だ」。日本を取り巻く環境は厳しい。出生率70万人割り込み、GDP世界4位に転落、一人当たりGDPも韓国に抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位。に後退した。 もはや一流国とはいえない日本復活のため、首相には繊細にして豪快、慎重にして大胆な政局運営を求めたい。
樫山幸夫