「ぜひこのペースで返済を」自賠責の6千億円“100年返済問題”で進歩 40年早くなる!? でも全く喜べない!
財務省と国交省の大臣の発言にみる温度差
2025年度の返済額について、両省の大臣に尋ねました。 加藤勝信財務相は12月24日の会見で「自動車損害賠償保障制度を考える会」(座長・福田弥夫八戸学院地域連携センター教授)の要望を受けて次のように話しています。 「まずは令和3年(2021)12月の国土交通大臣との合意において令和4年度の繰戻し額の水準55億円を踏まえ、引き続き継続的に取り組むなどの明記がされています、という大臣間合意の話をさせていただいた上で、交通事故被害者団体の方から、交通事故に遭われた方やその家族の重い負担についてもお話もございましたので、自動車事故の被害者保護等の重要性を改めて認識をさせていただきました」 「(略)財政上厳しい中ではありますけれども、交通事故被害者を受け入れているグループホームへの支援をはじめとして、被害者保護等に係る事業が安定的継続的に実施されるよう、一般会計からの繰り戻しを着実に行うということをしていきたいと考えております」 加藤財務相が返済の基本とするのは100億円ではなく、両省の大臣で合意した55億円をベースとしています。これに対して、中野洋昌国交相は、こう話します。 「令和7(2025)年度の当初予算につきましては、私も早期かつ着実な全額の繰戻しに向けてということで、大臣間の合意を踏まえまして、今、事項要求行っているところであります。閣議決定はこれからでございますので、具体のどういう状況かということは差し控えさせていただきますけれども、いずれにしても、全額の繰戻しに向け着実にしっかり進めていきたい」(12月24日夕方) 中野国交相も大臣間合意に基づく返済であることを認めながらも、短いコメントの中で「全額の繰戻し(=返済)」というフレーズを2回繰り返しています。
でも「約束」はありません いつまでに返すかも
実は、財務省と国交省の大臣合意では、最低限の返済額を54億円と定めていますが、全額を返済するとは明記していません。また、この合意内容は2027年までしか有効ではありません。 それ以降にどういう返済を実行するかは、有効期限が切れる前年に両省の大臣間で再び合意します。返済合意は短期ですが、返済は超長期にわたるというアンバランスを続けているのです。 財務省の返済が進まないことが主な原因で、2023年4月の自賠責保険契約から保険料に「賦課金」としての自動車ユーザーの負担が上乗せが行われています。返済額への目が厳しくなっているのは、こうしたあいまいな返済合意にも原因があるのです。 前述の「自賠責制度を考える会」が両大臣に手渡した要望書には、こんな当たり前のことが記されていました。 「令和7年度予算における繰戻額の増額を強く願い、以下の通り要望します。全額の繰戻し時期を明確にするなど、繰戻し金返済の道筋の提示を行うこと」 100年返済が60年返済になっても喜べない理由は、こんなところにもあるのです。
中島みなみ(記者)