障害がある人もない人も、すべての人にとって「世界一」の帝国劇場に。We Need Accessible Theatre!
当事者の声を聞き、ともに作り上げていく
アンケート調査では、障害への理解ある対応を願う声も多く集まった。「耳がきこえないといっても、きこえの程度によって求めるサポートはまったく異なります。障害というのは多様だということ、そしてさまざまな人が劇場に来ているということを理解してもらいたい」と山崎さんは強調する。 こうした演劇ファンの生の声を届けるべく、「ウィー・ニード・アクセシブル・シアター」はアンケート結果をまとめた資料も東宝に提出した。劇場側に求められるのは、障害がある当事者の意見や希望を聞く真摯な姿勢だ。「新しい建物ができても、行ってみると使いづらく感じることがあり、残念に思うことがよくあります。東宝さんは、劇場のアクセシビリティについて専門家の意見を聞いていらっしゃるということでしたが、実際に劇場を使っている障害当事者の意見も十分に聞いたうえで、よりよい劇場を作ってもらいたいです。そのプロセスが、今後のスタンダードになっていけば」と廣川さんは期待を込める。 5月10日の記者会見の場で、美月さんはこのように締めくくった。「東宝さんとのお話で印象的だったのは、帝国劇場は世界一の劇場を目指すということです。そしてそれは、“誰にとっても世界一”というふうにおっしゃっていました。また、私たちの話を真剣に聞いてくださり、思いに向き合ってくださいました。これを機に、前向きに検討してくださるんじゃないかと大きな期待を持っています」 障害がある人への「合理的配慮」の提供が義務化され、アクセシビリティ向上に関する議論は少しずつ進んできている。一方で演劇やコンサートなどの舞台芸術においては、設備やサービス面で十分な配慮が得られずにいる人が少なくないことが、「ウィー・ニード・アクセシブル・シアター」の活動を通じて明らかになった。障害があってもなくても、誰もが豊かでより良い生活を望む権利がある。そのことを今改めて認識する必要があるのではないか。 同団体は現在も署名活動を続けており、国への要望活動を進めている。また、同団体の活動を受け、東宝は障害当事者の意見を聞くことを前向きに検討しているという。今後の動きに引き続き注目していきたい。 text: Eimi Hayashi